北海道新幹線の並行在来線「バス転換」という荒唐無稽 試算に無理筋、もはや国の介入は避けられないのか

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2030年に予定されている札幌延伸に向けて、北海道新幹線の工事が着々と進んでいる。その一方で、廃止が予定されている並行在来線区間の代替バスの運行形態は不透明なままだ。新幹線開業後、沿線自治体に巨額の負担を押し付けるという強引な政策は、いまや破綻の兆しを見せている。

必要なのは「国の介入」

札幌市(画像:写真AC)
札幌市(画像:写真AC)

 以前なら、道は代替バスを維持し、その費用を道が率先して負担する方針を採っていただろう。それどころか、道負担で鉄道を維持したかもしれない。しかし、なぜそうならなかったのか。

 答えは簡単である。北海道経済が破綻に向かって一直線に進んでいるからだ。道民ひとりひとりが110万円以上の借金を抱えている。財政規模に対する借金の割合を示す実質公債費比率は、2021年には19.1%だった。過去最悪だった2010年の24.1%から改善されたとはいえ、47都道府県中最悪であることに変わりはない。さらに、2025年には返済が集中し23.1%に達する見込みだ。人口減少による経済活動の縮小がこれに拍車をかける。

 政府の推計によると、北海道の人口は2015年の約538万人から、

・2040年:428万人
・2060年:320万人

に減少すると見込まれている。一極集中の札幌市でも人口減少は避けられない。

 札幌市によると、札幌市の人口は2010年の約191万人から、2060年には143万人に減少すると推計されている。北海道新幹線がどうなろうと、北海道は40年後には現状維持すらままならなくなるのだ。

 道に希望がない以上、必要なのは「国の介入」である。2023年7月、国と道は、存続が検討されていた函館~長万部間の貨物鉄道の存続について合意した。この区間が廃止されると、首都圏などからの農産物が届かなくなることが懸念されていた。そこで国土交通省は、2022年11月から北海道庁、JR北海道、JR貨物と非公開の協議を行い、貨物線を存続させる方針を決めた。

「並行在来線は地元で決める」

というルールを無視して、国が直接介入した形だ。これをきっかけに、代替バス運行維持のための国の支援や、鉄道廃止の見直しが求められているのだ。

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