北海道新幹線の並行在来線「バス転換」という荒唐無稽 試算に無理筋、もはや国の介入は避けられないのか

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2030年に予定されている札幌延伸に向けて、北海道新幹線の工事が着々と進んでいる。その一方で、廃止が予定されている並行在来線区間の代替バスの運行形態は不透明なままだ。新幹線開業後、沿線自治体に巨額の負担を押し付けるという強引な政策は、いまや破綻の兆しを見せている。

北海道経済という独自システム

札幌工区。発進立て坑部。札幌方を望む。2023年7月(画像:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
札幌工区。発進立て坑部。札幌方を望む。2023年7月(画像:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)

 代替バスの維持費も問題だ。道の試算では、長万部~小樽間の鉄道を整備した場合、30年間の累積赤字は864億6000万円になる。一方、全線をバス転換した場合は70億2000万円と試算されている。いずれにしても赤字だが、バスを使えば鉄道より大幅に赤字を減らすことができる。これがバス転換が強く主張された理由である。

 しかし、どちらにしても赤字運行は決定事項だ。この赤字を誰がどのように負担するのかはまったく決まっていない。前提として沿線自治体が負担することは想定されているが、分担額がどうなるかは、まったく議論されていないのだ。

 さらに事態を難しくしているのは、並行在来線が廃止されバス転換された場合、沿線自治体が負担を分担した前例がないことだ。1997(平成9)年に開通した長野新幹線では、並行在来線となったJR信越本線の横川~軽井沢間は第三セクターに移管されずに廃止となった。この区間ではJRバス関東が代替バスを運行している。代替バスは赤字だが、新幹線の利益で補い維持できている。そのため参考にならない。

 結局、沿線自治体の本音は「道が負担しろ」なのだろう。沿線自治体が公共交通のコストを道に押し付けるのは奇妙と思われるかもしれないが、道内では道が負担するのが当たり前という意識も確かに存在している。その背景には、北海道独特の経済システムがある。

 公共事業によるカネの流れを軸に地域経済が回る構造は全国的に見られる。北海道では、明治時代の開拓使に始まり、道庁や北海道開発庁が大規模な公共事業を通じて民間企業に資金を流す仕組みで経済が回ってきた。

 このシステムは独特の学閥に象徴される。日本では通常、東京大学のエリート官僚出身者が国と地方自治体のパイプ役を務める。しかし北海道では、北海道大学によって強力な学閥が形成されてきた。

 北大出身者は道庁や北海道開発庁に就職し、民間企業に資金を流すシステムをコントロールしていた。その是非はともかく、北海道経済は国や道からカネが落ちることを前提に成り立っている。そのため、代替バスの負担を沿線に押し付ける北海道に対して、沿線の不満がたまっているのだ。

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