どうなる鉄道経営 五輪見据え投資増もコロナ禍で収入減 迫られる計画転換
新型コロナウイルス感染症の影響で人々の移動が減り、鉄道各社は決算で軒並み赤字を計上した。投資の原資だった運輸収入が激減し先行き不透明な中、各社は大規模な計画転換を迫られている。今後はどうなっていくだろうか。
ホームドア設置やライナー導入 原資は潤沢な運輸収入だった…
東急のセグメント別営業利益を見ても、2020年度上期は運輸事業が約122億円の赤字に対し、ホテル・リゾート事業は約185億円の赤字となっており、鉄道事業の不振を支えるどころか、それ以上の赤字を生み出してしまっている。こうした状況は東急以外の大手私鉄でも同様の構図となっており、人の移動を中心に事業を営んでいる鉄道会社にとって、コロナ禍の影響の大きさを物語っている。
一方で輸送人員のうち、定期券利用者は第1四半期の39%減から第2四半期は35%減へとほぼ横ばいなのに対し、定期外利用者は第1四半期の56%減から第2四半期は26%減まで大幅に回復しており、今後も緩やかな回復が見込まれる。しかし、定期券利用者の完全な回復は困難な見通しで、鉄道会社にとって重要な顧客であった通勤客の減少は、長期にわたって経営に大きな影響を及ぼすことも予想される。
近年、関東の大手私鉄は通勤ラッシュ対策やホームドア設置などの安全対策、着席通勤ライナーの導入などサービス向上に加え、東京オリンピック・パラリンピックに向けた大規模投資を行ってきたが、これらの投資の原資となっていたのが潤沢な鉄道運輸収入だった。しかし、鉄道事業が赤字に転落したことを受け、各社とも設備投資を見直す動きが加速している。