大都市圏から離れているのに、箱根が「大観光地」として発展したワケ
箱根は日本を代表する観光地である。インバウンド回帰で「箱根バブル」と呼ばれるほど、観光客でにぎわっている。そもそも、なぜ箱根は大都市圏から遠く離れているにもかかわらず、観光地として発展してきたのか。
インフラの重要性
このように道路や鉄道が整備されたことで、箱根は戦前には全国的にも珍しい交通網を持つ便利な観光地として有名になった。戦前の雑誌には次のように書かれている。
「東京から二時間余りでいける箱根の山々は、青葉はえて一際装ひを凝らし、芦ノ湖の碧水、亦千古の謎を包んで霊峰富士の英姿を映し、尋ぬるに史跡あり、憩ふに温泉ありで、そぞろ遊心をそそるものがある。(中略)しかも今や全山道路が拓かれて、バス、ハイヤーの運転至らぬはなく、登山電車と共に希に見る山嶽交通の発達を示している」(『話』1937年7月号)
記事では、箱根の温泉街で多くのバス会社が観光客を奪い合っていたことにも触れている。「箱根バブル」は今でも話題だが、常ににぎやかで注目すべき観光地だった。
そのにぎわいの源が道路や鉄道であったことはいうまでもない。箱根の絶えることのない繁栄は、観光客を引きつけるインフラがいかに重要かを物語っている。これが大都市圏から離れているにもかかわらず、箱根が観光地として発展した理由である。