「大阪・関西万博」 国民の共感を得るにはどうしたらいい? パビリオン開発だけじゃない、その“意義”について再考する
進化する技術
万博での運行事業者はANA、ジョビー・アビエーション(カリフォルニア州を拠点とする航空モビリティ企業。トヨタが出資)、JAL、丸紅、スカイドライブ(日本の空飛ぶクルマ、ドローン販売企業)の5社と、会場内ポート運営の1社(オリックス協賛)が決まっている。
ANAは米ジョビー・アビエーションの「eVTOL Joby S-4」、JALは独ボロコプターの「VoloCity」、丸紅は英バーティカル・エアロスペースの「VX4」と、連携先の外国企業の機体を運行予定。日本で空飛ぶクルマを開発しているスカイドライブは現在設計開発中のふたり乗り(ひとりはパイロット)の空飛ぶクルマ「SD-05」を運行する予定だ。
こうして見ると、
「動く歩道 → 環境配慮型モビリティ → 空飛ぶクルマ」
と、確かに人類の文明は進歩しているのだろうと感じる。空飛ぶクルマはSFによく登場する夢の技術だが、今は世界的に実用に近づいているため、今回の万博は国内での実証実験の場となる。しかし、最近、バーティカル・エアロスペースのVX4がイギリスでの実証実験中に墜落するなど、本当に今回の万博で来場者を乗せる輸送機関として利用できるのか、不安も出てきている。
経済発展していた時期に開催した万博は国民の関心や期待が高く、開催への共感も総じて高かった。しかし、国家としての成熟期に入り、経済成長が停滞するようになると、万博誘致は開催地への集客効果、それにともなう経済波及効果が大きく期待されるものになっており、恩恵を受ける地域や産業は当然ながら誘致に積極的になるが、国民全体の万博への関心や共感、盛り上がりの一体感は低くなり、開催に否定的な人も増えている。
オリンピックも含め、近年は開催への意識が当事者と一般国民で大きく乖離(かいり)する状況になっていることは憂慮される。それでもオリンピックはアスリートの活躍によって強い感動や一体感を生むが、万博の場合はテーマや展示にわかりやすさや共感がないと一体感は生まれにくい。
万博の開催はそのエリアの開発促進に直結しているが、経済効果や開発の思惑が開催の意義の中心になってしまうと、万博の開催を疑問に思う人がさらに増えていってしまうだろう。