グーグルがまちづくりに進出! 「人間中心のスマートシティ」構想をひも解く【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(1)

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グーグルがまちづくり分野に参入。カナダ・トロントでのスマートシティ撤退から間もなく、米西海岸サンノゼのブラウンフィールドで新たな都市開発に乗り出した。グーグルが手掛ける「人間中心のスマートシティ」とは。

「人間中心のスマートシティ」とは?

次世代の動く街路空間のコンセプト(画像:グーグル)。
次世代の動く街路空間のコンセプト(画像:グーグル)。

 ライトレールの駅を降り立てば、目の前にはグーグル社も入居するヒューマンスケールの街が広がり、オフィスや住宅、公園などを結ぶ歩行者動線へと導かれる。街なかの人の移動はゼロカーボンを目指し、徒歩や自転車、公共交通の割合を計65%とする野心的な計画だ。現状このエリアのマイカー利用率は6割を超えていることを考えると、その目標の意味が分かるだろう。そのため、4000戸の住宅に対して駐車場上限は2360台、商業や従業員、来客用には4800台の駐車場しか設けない計画だ。IT企業が都市開発を通して人々の意識や行動変容を促し、カーボンフリー社会を先導していくものとなっている。

 日常的な生活は、徒歩や自転車で済ませられるように、車道とは分離した専用空間を確保し、周辺エリアとも結ばれ、調和した設計となっている。健康増進や地域コミュニティの形成としても、これら歩行者や自転車ネットワークが強く意識され計画されている。

 新たな都市開発により生じる自動車交通に対しては、エリア全体で静穏が保たれるよう配慮されるとともに、速度を抑制する様々な装置や交通状態のモニタリングなどにより、事故のないビジョンゼロの精神が盛り込まれている。

 また、カナダのトロントでは実現できなかったダイナミックレーンが盛り込まれている点も興味深い。道路を走る機能だけではなく、時間帯やシチュエーションに応じて車線を柔軟に活用するというアイデアであり、地区内の道路の断面構成に「DL」として空間が確保されている。

 グーグルはエリアの居住者向けに、自動車以外の多様な移動の選択を支援するインセンティブ施策を用意し、従業員向けにも啓発を行い、クルマの“賢い使い方”を促進していくプログラムを準備している。例えば地区周辺の従業員にはカープールサービスを用意し、スマホなどで従業員同士をマッチングすることで一人乗りマイカー通勤を抑制する計画だ。トロントではできなかったグーグルによるMaaSが、サンノゼでお披露目される日も近いだろう。

 従業員だけではなく、居住者や来訪者を含めた地域のウェルビーイング(幸せや健康)を高めていくグーグルの挑戦は、わが国の郊外部での新しい都市開発として、また、カーボンフリー社会のスマートシティ戦略、オフィス戦略としても、目が離せない注目の取り組みだ。

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