グーグルがまちづくりに進出! 「人間中心のスマートシティ」構想をひも解く【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(1)
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グーグルがまちづくり分野に参入。カナダ・トロントでのスマートシティ撤退から間もなく、米西海岸サンノゼのブラウンフィールドで新たな都市開発に乗り出した。グーグルが手掛ける「人間中心のスマートシティ」とは。
グーグルが提案する「ダウンタウン・ウエスト」プロジェクト
米国カリフォルニア州サンノゼ市議会は2021年5月25日、グーグルが提案する「ダウンタウン複合用途開発計画(通称、ダウンタウン・ウエスト計画)」を全会一致で承認した。計画では、公共交通の駅直近に東京ドーム7個分、約32haの敷地内に、オフィス、住宅、店舗、ホテル、公園などが建設される新時代の公共交通志向型都市開発(TOD)だ。
敷地には、2万人の従業員を収容できるオフィススペース(約6.7ha)、4000戸の住宅(うち、アフォーダブル〈手頃〉な住宅を1000戸)、ショップやレストラン(約4.6ha)、公園やオープンスペース(約6ha)、ホテルや短期宿泊施設などを計画している。同社キャンパスの中でも最大級の規模だ。
全体で約10億ドル(約1140億円)の投資計画であり、職業訓練、ホームレス支援など地域貢献のために約1.5億ドル(約170億円)のコミュニティ安定化基金の創設も含まれているという。市は2014年に街の玄関口となるディリドン駅エリア計画(DSAP)を策定しており、2019年からはグーグルの提案との調整を進め、官民連携による行政計画として2021年5月25日に承認している点も興味深い。
日本の都市開発計画と大きく異なる点は、都市開発の計画書だけではなく、交通需要マネジメントや、近隣交通および駐車場利用とモニタリングの計画書も盛り込まれている点であろう。地区全体には、デザインに関するガイドラインも策定されており、都市開発や交通計画はこのガイドラインに準拠する必要がある。
早ければ2022年から開発が始まり、10年かけて3段階で都市がアップデートされていく計画だ。地区のガイドラインは475ページにも及ぶが、ここではモビリティに関する特徴的な計画を見ていくことにしよう。