「航空運賃」高すぎ問題 庶民の海外旅行はもはや遠き夢? 航空業界も人材不足・石油減産・脱炭素で同情必須の苛酷現実
国際航空運賃は高止まりしている。コロナ以前は当たり前だった海外旅行も、今や遠き夢となりつつある。次々と路線が再開されるなか、いつまで続くのだろうか。
人材が確保できない理由

感染拡大は終息したのに、人材が確保できないのはなぜか。その理由は、発生当時の航空会社の対応にある。
前述したように、ほとんどの航空会社は賃下げ、解雇、他業種への出向などで会社を維持しようとした。これは会社を存続させるためにはやむを得ない選択だったかもしれないが、労働者から見れば不信感や不安感を抱かせるものだった。その結果、航空業界は
「危機に弱く、将来の雇用に不安がある」
と認識されるようになった。
日本国内でも人材不足は深刻だ。国内の航空業界で最大の産業別労働組合である航空連合(JFAIU)は8月24日、公式サイトに「だからこの仕事が好き」と題した特設ページを掲載し、人材確保キャンペーンを開始した。しかし、どんなに魅力的な仕事であっても、一度ついた印象を振り払うのは容易ではない。
企業は燃料から人材まで、さまざまな問題の解決に注力している。しかし、問題はこれにとどまらない。航空業界は、今後運賃に転嫁しなければならないコストの増大に直面しているからだ。それが、脱炭素社会に向けた取り組みである。
航空業界は、排出量を削減する手段として、持続可能な代替燃料と新技術の導入を提唱している。この移行には多大なコストがかかる。特に、代替燃料と従来のジェット燃料との価格差は1.5~2倍と見積もられている。
そのためANAホールディングスは、2021年に価格引き下げのための政府支援を求める意向を示している。脱炭素社会は人類社会の存続に不可欠な取り組みだが、そのためのコストは膨大だ。
事実、航空運賃は上がり続けるかもしれないが、下がる理由はない。航空運賃がコロナ以前の水準に戻ることは二度とないかもしれない。