航空業界で「AI活用」が遅れている根本理由

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航空業界では、航空機操縦の自動化だけでなく介入できる分野は多い。その一方で、航空業界ではAIや管理システムの活用に疑問を呈する声もある。なぜか。

航空業界におけるAI活躍の範囲

飛行機(画像:写真AC)
飛行機(画像:写真AC)

 前述のように、AIの導入にはさまざまな懸念が考えられるが、国際民間航空機関(ICAO)は、「AIは航空業界の幅広い分野で活用される」としている。ICAOが考えるAIが航空業界で活躍する主な分野は次のとおりである。

●航空機の安全運航に関するデータの分析および取りまとめ
 航空機の運航で発生する不安全事象に関するデータは膨大かつ複雑であり、ある事象が別の事象と関連している可能性もあるため、AI技術を用いてこれらのデータを分析し、うまく集計することができれば、より安全な運航につながる。

●航空機の整備
 整備作業は安全性を維持するために規定されたタイミングで行われる。過去のデータから故障の時期を特定し、事前に整備計画を立てたり、部品の調達を予測したりといった分野でAIが活躍する可能性がある。国内の航空会社でも整備部門への導入が進んでいる。

●パイロットの訓練
 パイロットの訓練は、緊急事態を想定してシミュレーターを使って行われる。過去の訓練や実運航のデータを用いてAIが訓練プログラムを考案することで、より実運航に即した効率的な訓練が実現できると考えられる。

●航空機のデザイン
 航空機の設計は、航空機の詳細な挙動を制御するための包括的なアプローチを必要とするため複雑である。現在の航空機は、設計・製造にコストと時間がかかる。AIが設計プロセスを担当することで、製造までの時間を短縮できることが期待されている。

●環境保護に向けた取り組み
 AIは、燃料効率の良い飛行ルートや飛行高度を計画することで、二酸化炭素排出量の削減に貢献できる。国際的な航空会社はすでにAIを使って、気象条件や航空機の重量に応じて最適な飛行ルートを算出している。

●空港
 AIは空港の混雑状況やセキュリティーチェックの分析に役立つ可能性がある。AIは待ち時間を短縮し、危険物のより正確な判定を可能にする。

●疲労管理
 ヒューマンエラーを減らすことは、事故を減らす有効な手段である。そのためには、疲労やストレスの適切な分析が必要であり、AIはこの分野で役立つ可能性がある。

 このほか、運航ダイヤの計画や遅延予測など、顧客の利便性向上をサポートするAIも考えられている。

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