航空業界で「AI活用」が遅れている根本理由
航空業界では、航空機操縦の自動化だけでなく介入できる分野は多い。その一方で、航空業界ではAIや管理システムの活用に疑問を呈する声もある。なぜか。
安全性が競争圧力に屈する懸念

例えば、ルート計画や整備予測などだ。安全性への懸念は、また別の角度からもたらされる。業界に新技術を導入する際、「底辺への競争」が起こることが懸念されている。
底辺への競争とは、産業育成や企業誘致のために国がさまざまな規制緩和を行い、社会福祉や労働条件が最低レベルになることを意味する。これをAIの開発に置き換えると、AIの開発競争が各国間で盛んになれば、安全性が競争圧力に屈する懸念がある。
これらの懸念に対処するために重要なことは次のとおりである。
1.AIの品質に関する明確な基準を設けること
2.価格競争を過熱させないために、各国が開発資金を前もって投入し、明確な規制を設けること
3.安全性があまり重視されないものからAIを導入し、時間をかけてシステムを理解し、構築すること
航空機に搭載されるソフトウエアの基準は、テロの脅威に備えて特に厳しくなっている。連邦航空局(FAA)、カナダ運輸省、欧州航空安全機関(EASA)に共通するのは、DO-178Cという基準である。
DO-178Cは、航空機に搭載されるソフトウエアの安全性を確保するための71の審査項目からなるガイドラインである。ソフトウエアは「影響なし」から「壊滅的」までの5段階で評価され、「壊滅的」は最低レベルで
「故障に死亡および航空機の墜落につながる可能性」
があるとされる。
EASAはまた、「人間がAIの動向をモニターすること」という独自の要件も追加している。