東海道新幹線が台風7号で大混乱 トラブルまみれの「移動体験」はなぜ記憶に残るのか?

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台風7号は交通機関にも大きな影響を与えた。東海道新幹線を始めとする多くの列車が運休や大幅な遅延を余儀なくされ、高速道路も一般道も至る所で通行止めが起きた。

過去の印象的な移動体験

台風のイメージ(画像:写真AC)
台風のイメージ(画像:写真AC)

 今回の台風に限らず、過去を振り返ってみると、印象に残っている筆者の移動体験は、予定どおりに行かなかったときのことばかりだ。

・行き先を見間違えて知らない場所に連れて行かれてしまったマニラのジープニー
・想像以上の揺れと船酔いに苦しんだおがさわら丸
・券売機と格闘している間に乗る予定の電車が出発してしまったアムステルダム中央駅
・大雪による立ち往生で、靴のなかまでびしょぬれになりながら雪のなかを歩いた富山の路面電車

など、どれもその場では「かんべんしてくれ」と思ったりもしたが、今となっては人生を彩るとてもよい思い出になっている。

 一方、何のトラブルもなく順調に予定どおり目的地に着いた移動体験は、そのときは快適だし、トラブルがなくてよかったな、と思うのだが、後から振り返ってみると印象に残っていないし、そもそも思い出せないことが多い。もちろん、一緒に行った人と思い出話に花が咲くこともない。

困難克服で成長

トラブルに遭った人のイメージ(画像:写真AC)
トラブルに遭った人のイメージ(画像:写真AC)

 トラブルがあった移動体験はなぜ印象に残りやすいのだろうか。

 トラブルに見舞われているときは、ストレスや不安、予期せぬ出来事による驚きなどの強い感情がわき起こりやすい。感情と結びついた出来事は記憶に深く刻み込まれるため、トラブルがあった移動体験は印象に残る。

 トラブル体験は人に話す機会も多い。話すたびに記憶を思い出す必要があり、これも記憶の定着を促している。また、人に話す場合には出来事をストーリーとして組み立てる。エピソードをともなった記憶は他の記憶に比べて記憶に残りやすい。

 さらにトラブルに見舞われた人のなかには、他の移動手段を探したり、差し当たり快適に過ごせる場所を探したり、トラブルの解決のためのさまざまな努力をする。

「情報収集して一生懸命考えたこと」

は記憶に残りやすい。そして人間は、こういった困難を克服するプロセスを通じて、新しい知識やスキルを獲得し、成長していく生き物でもある。

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