韓国&台湾の「邦人救出」が極めて難しいワケ 4月スーダンの比ではない
邦人退避が話題に
2023年4月、戦闘が続くスーダンから在留邦人の退避が行われた。2021年8月のアフガニスタンからの邦人退避と合わせて、話題になった。
一方、日本周辺の北東アジアにおいては、北朝鮮や中国が軍事的な行動に移った際、韓国や台湾などにいる邦人の救出をどうするのかということが議論になっている。
とはいえ、スーダンやアフガニスタンのケースと異なり、韓国や台湾からの邦人退避は難易度が非常に高いのが実際だろう。本稿では、最新の研究を交えながら、在外邦人の救出について検討していきたい。
突発事態、だが一番厄介なケース
非戦闘員退避活動(NEO)という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、治安が悪化した地域から民間人を退避させる軍の活動を指す。邦人退避などは本来NEOと呼ばれることになるが、メディアなどでは
・邦人退避
・邦人救出
という言葉がよく使われている。ここでは、わかりやすさを優先し、これらの言葉を使っていく。
邦人救出ミッションというと、頭に思い浮かぶのはアフガニスタンやスーダンのケースだろう。ある日突然戦闘が開始され、国全体が戦火に包まれる。そして、外国人は逃げ出そうにも民間機は飛んでいない。そこに自衛隊の輸送機が助けに来る。
邦人救出ミッションで困難なのが、この突然の情勢悪化だ。スーダンを例にすれば、準軍事組織の即応支援部隊が攻勢を開始したのが4月15日のこと。このときの攻撃でスーダンの首都にあるハルツーム国際空港に駐機している民間航空機が破壊されている。
破壊されたうちの1機はサウジアラビアの国営航空会社サウディアが保有する機体だが、これはサウジアラビアの首都リヤドとハルツームを結ぶ定期便で、通常通りにリヤドを出発し、ハルツームに着陸。そして、リヤドに引き返すために駐機しているところを攻撃されている。
つまり、攻撃直前まで民間航空機は飛んでおり、突然攻撃が始まったということになる。実際、外交筋などもスーダンの情勢悪化については寝耳に水であった。
一方、アフガニスタンのケースは情報の読み違いが原因である。米国のバイデン政権は2021年8月末にアフガニスタンからの米軍撤退を宣言していた。米軍撤退という情勢の変化に合わせて、タリバン軍が攻勢は強めた。当初は首都カーブル陥落に3か月を要するという観測が多かったが、ふたを開けてみると8月15日にはカーブルが包囲され、抵抗もなくカーブルは陥落している。
邦人救出といった場合、思い浮かべるのは突然の情勢変化に伴う作戦だろう。情勢悪化が徐々に進む場合には、外務省が退避勧告を出し、各航空会社が臨時便を出したり、政府がチャーター便を出して、一刻も早い出国を促す。
しかし、突然情勢が変化した場合にはそうはいかない。これはここまで紹介したスーダンやアフガニスタンのケースでも明らかだろう。当たり前のことだが、突然の治安悪化が厄介なケースなのである。