東急東横線「Qシート」開始 ワンコイン有料座席は“応急処置”サービスか? 今後問われる沿線人口確保という本質

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8月10日、東急電鉄は東横線に新たな有料座席指定サービス「Qシート」を開始した。その可能性とは。

沿線人口増を狙う鉄道会社

「Qシート」運行時刻(画像:東急電鉄)
「Qシート」運行時刻(画像:東急電鉄)

 しかし、有料の指定席が本当に最適な解決策なのか、結論を出すのは時期尚早だ。将来的な人口減少をすべて補えるかどうかは不透明だからだ。

 鉄道会社のなかには、沿線人口を増やして鉄道収入を確保しようという、別のアプローチを採っているところもある。千葉県の北総鉄道(千葉県鎌ケ谷市)もそのひとつだ。同社は沿線人口を増やすために値下げを選択した。

 同社の北総線は京成高砂駅と印旛日本医大前駅を結ぶ。この路線は都心に直結しているが、沿線の千葉ニュータウンの計画は縮小されている。運賃値上げの結果、乗客数は伸びず、2000(平成12)年3月期末の累積赤字は447億円に膨らんだ。

 そこで同社は、経営改善策の一環として2022年10月から値下げを実施。通勤定期運賃を13.8%、通学定期運賃を64.7%値下げした。価格は以下の通り。

●通学定期運賃「京成高砂~印西牧の原駅間」
1か月定期:1万4990円(現行)、4990円(改定後)、▲1万円(値下げ額)
6か月定期:8万950円(現行)、2万6950円(改定後)、▲5万4000円(値下げ額)

●普通運賃「新鎌ヶ谷~千葉ニュータウン中央駅間」
ICカード利用:580円(現行)、475円(改定後)、▲105円(値下げ額)
切符利用:580円(現行)、480円(改定後)、▲100円(値下げ額)
 家計の負担を軽減し、若い世代を沿線に呼び込む戦略だ。

 特に通学定期の大幅値下げは、家計の負担となっている子育て世代を呼び込む布石となる。今回の値下げにより、定期券の利用が前年比約3割増で推移していることから、この戦略の成否が今後試されることになる。

 鉄道業界の変革は、会社の存続とサービス品質の向上の両面における課題である。「Qシート」導入のような革新的なサービスは、顧客の安全性と快適性を確保しつつ、業界全体で持続可能な方向性を示している。

 しかし、可処分所得も減少するなか、継続的な利用者層の維持が可能なのか。この点については、今後の検討が必要だろう。

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