東急東横線「Qシート」開始 ワンコイン有料座席は“応急処置”サービスか? 今後問われる沿線人口確保という本質
運賃値上げという手段
コロナ禍による経済的ダメージは簡単には回復できない。また、人口減少により乗客数は減少の一途をたどる。さらに、さまざまな議論があるが、テレワークは今後も増え続けると予想される。
読売新聞が2023年4月6日に発表した全国世論調査によると、新型コロナ収束後も社会に定着させるべきもの(複数回答)のうち、
・在宅勤務を含むテレワーク:45%
・オンライン授業・講義:25%
となった。特に若い世代はテレワークに好意的で、18歳から39歳の66%がテレワークを支持している。このような状況のなか、鉄道会社は何らかの方法で収益を上げなければならなくなった。
収入確保のためにまず取られるのが、運賃の値上げである。実際、鉄道各社は2023年3月から相次いで運賃を値上げしている。
JR東日本や東京メトロなど首都圏の大手7社は、初乗り運賃を10円前後値上げした。鉄道需要がコロナ禍以前の8~9割程度にしか戻らないと予想されるなかでの苦渋の決断である。なぜ難しい決断かというと、運賃値上げだけで
「鉄道収入を維持するのは難しい」
からだ。
そればかりか、運賃値上げは乗客のさらなる減少を招きかねない。特に競合路線の多い関西では、運賃値上げによって増収分が帳消しになるほど乗客が鉄道から離れてしまった例もある。もちろん、下がるのは鉄道収入だけでなく、駅ビルなど関連事業にも広く影響が及ぶ。
有料指定席の価格を見ると、
・東急線のQシート:500円
・京王線の京王ライナー:410円
と、どちらもほぼワンコインだ。この値段で、座席保証に加え、車内電源やWi-Fiなど手の込んだサービスがある。両路線で1時間ほど過ごす乗客も多い。
今後、テレワークがさらに普及し、通勤が週に数日になれば、財布を気にせず利用する乗客も増えるだろう。鉄道会社も、現在の沿線住民に加え、座って通勤できる列車があるという要素を生かし、住民の増加を見込んでいる。