誤解された「トヨタ生産方式」 生産性向上は単なる結果にすぎない、秘められたその真意とは

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トヨタ生産方式とは、あらゆる無駄を極力排除して生産効率を向上させる考え方であり、生産性の向上を第一義とする生産方式と解釈されがちである。しかし、生産性の向上は結果であり、真の目的は別のところにある。

真の狙いは「人間性尊重」

トヨタ自動車のウェブサイト(画像:トヨタ自動車)
トヨタ自動車のウェブサイト(画像:トヨタ自動車)

 トヨタ自動車は「人間性尊重」という考え方を大切にしている。人間性尊重とは、簡単にいえば、「せっかく仕事をするなら、意味のある仕事をしてほしい」ということだ。

 人間には1日24時間が与えられており、誰もが平等だ。その限られた時間で働くのであれば、価値のあるものを作るとか、新しいアイデアを生み出すとか、人間としての付加価値の高い仕事ををしてほしいという考え方だ。

 つまり、作業のやり直しや不良品の生産といった意味のない仕事はさせたくないということである。

 TPSは、誰かのために仕事を楽にしてあげたい、人間らしい仕事をしてほしいという「人間を中心とした考え方」なのである。

 近年、CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)が注目され、企業のあり方も変わりつつある。

 投資家は「企業の社会的責任」を果たす方法を模索しており、利益を追求するアプローチから、社会をより良くするアプローチへと移行している。これらを満たす仕事は、まさに社会的に「意味のある仕事」であり、利益の追求にもつながる。

 誰かのために仕事を楽にするという考え方と、未来の世界のために社会的意義を果たすという考え方にはつながりがある。

 人間の生産性はモチベーションに左右される。真に生産性を向上させるためには、自分の仕事が何につながるのかが明確にわかる「意味のある仕事」を与えることが重要なのかもしれない。

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