新幹線「地方開業」がもたらす恩恵と課題 美談に祭り上げられる“経済波及の実態”とは

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2000年以降、新幹線は次々と地方に乗り入れ、地方の観光地へのアクセスが向上した。その結果、観光客の流入が増え、観光産業は活況を呈している。

新幹線開業効果をどう確保するか

2027年に開業予定のリニア中央新幹線(画像:JR東海)
2027年に開業予定のリニア中央新幹線(画像:JR東海)

 今後、北海道新幹線と北陸新幹線の延伸が予定されている。福井県の発表によると、北陸新幹線敦賀開業による福井県の経済波及効果は年間約210億円。福井県内では年間約1900人の雇用創出が期待できるとされている。

 さらに、リニア中央新幹線は2027年に開業する予定だ。リニア中央新幹線が開通すれば、品川から名古屋までの所要時間が大幅に短縮される。これにより、東京や中京圏へのアクセスはさらに飛躍的に向上する。三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートによると、リニア中央新幹線開業による経済効果は少なくとも10兆7000億円と試算されている。

 さまざまな経済効果が期待される新幹線開業だが、すべての地域が“自動的に”恩恵を受けるわけではない。観光客数を確保し、地方を活性化させるためには、観光地や交通インフラの魅力向上だけでなく、地域資源の有効活用や観光振興策を検討する必要がある。

 例えば、富山商工会議所がまとめた報告書によると、北陸新幹線富山駅開業当時は

「富山駅を降りた時の印象がよくない(顔がない)。消費しようとする気分にならない」「2次交通がよくないため、富山に来られたお客さんを自家用車で案内するしかない」

といわれていた。

 そのため、地元が主体となって地域の魅力を発信するだけでなく、観光客の視点に立ったわかりやすい案内表示や、観光地へアクセスしやすい交通手段の充実が求められている。

 新幹線の開通は観光産業に大きな影響を与えるが、その効果を最大化するためには、地域全体が連携し、継続していくことが不可欠である。そして、観光産業の成長と地域の活性化を両立させるためには、さまざまな挑戦を続け、新たな展望を切り開いていくことが必要だろう。

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