新幹線「地方開業」がもたらす恩恵と課題 美談に祭り上げられる“経済波及の実態”とは
2000年以降、新幹線は次々と地方に乗り入れ、地方の観光地へのアクセスが向上した。その結果、観光客の流入が増え、観光産業は活況を呈している。
多くのメリットがある一方で、課題も

しかし、新幹線開業後の観光地の活性化は必ずしも順調ではない。
国土交通省の調査によると、秋田新幹線が開業した1997(平成9)年当時、秋田市内の観光地は活況を呈していたが、男鹿市など新幹線駅から離れた地域では観光客数が徐々に減少していった。
このことは、観光地の活性化には、
・地域全体の魅力向上
・交通環境の整備
が重要な要素であることを示している。
そこで秋田県では、新幹線停車駅のひとつで「小京都」とも呼ばれる角館や田沢湖周辺の魅力を開発するとともに、観光バスや人力車による遠方の観光地へのガイドツアーを実施している。
こんなデータもある。福井県がまとめた報告書によると、北陸新幹線の延伸開業があった2015年、日帰り客は前年比115%を記録したが、宿泊客は前年比101%とほぼ横ばいだった。新幹線の開通で利便性が向上した一方で、地方で宿泊する観光客は伸び悩んでいる。
また、先のコロナ禍の影響で、2020年以降、石川県、富山県、福井県の宿泊客数が前年比40%近く減少したのは大きなダメージだった。とはいえ、2023年末に予定されている敦賀延伸開業に合わせて、世界遺産スポットや立山・黒部峡谷などの自然スポットなどの魅力をアピールする計画が進んでいる。
特に北陸3県では、今後さらなる増加が見込まれる訪日外国人(インバウンド)対策も急務である。これらの課題は、今後の新幹線開業においても重要であり、地域全体で備えていく必要がある。