新幹線「地方開業」がもたらす恩恵と課題 美談に祭り上げられる“経済波及の実態”とは
2000年以降、新幹線は次々と地方に乗り入れ、地方の観光地へのアクセスが向上した。その結果、観光客の流入が増え、観光産業は活況を呈している。
新幹線開業による企業進出の促進

新幹線の開通は観光産業だけでなく、多くの関連産業にも好影響を与える。
北陸経済研究所のリポートによると、2015年に北陸新幹線が金沢まで延伸した際、石川県内に宿泊する観光客数は約700万人から900万人に増加した。
その後もコロナ禍に至るまで増え続け、隣県の富山県や福井県でも増えたというデータがあるほどだ。この増加の要因は、新幹線開業による「首都圏からのアクセス向上」にある。
さらに、新幹線の開通は進出企業の増加にもつながっている。北陸新幹線の延伸開業にともない、ファスナーなど幅広い製品を製造するYKKグループは、本社機能の一部を東京・秋葉原から富山県黒部市に移転した。また、YKKグループは他地域の企業にも北陸地方への移転を働きかけており、県外からも50社以上が進出している。
その理由はさまざまだが、
・首都直下型地震などの災害リスクを抑える
・就職で県外に人材が流出するのを防ぐ
点を挙げる企業が多い。
貴重な人材の確保や生産性の向上、ひいては地域経済の活性化につながることが期待される。