緊張続く台湾情勢 企業の駐在員退避の議論が広がる ポイントとなるのは“民間機の運航停止”だ
退避開始のポイント
企業によって台湾への依存度や事情が異なるので、懸念事項はまちまちだ。しかし、今日最も多く聞かれるのが、いつのタイミングになったら退避を開始するかだ。
この問題でポイントになるのが、
「民間航空機の運航停止」
だ。企業人たちと議論を重ねていると、よく台湾有事とウクライナ有事が比較されることがある。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の際、ウクライナから陸路でポーランドやモルドバに避難することができたが、台湾は海に囲まれており、有事の際には中国軍が台湾周辺の制海権と制空権を握ってくることを想定すれば、唯一の安全な退避手段は民間航空機となる。
台湾からの避難はウクライナの比ではなく、有事になれば即篭城(ろうじょう)の身になることを覚悟しなければならない。
しかし、民間航空機の運航は有事発生と同時に、もしくはその前でストップする可能性が非常に高い。それは過去のケースから想定される。
例えば、ペロシ訪台への対抗措置で中国軍が8月4日に軍事演習を行った際、韓国のアシアナ航空は5日にソウル(仁川国際空港)と台北(桃園国際空港)を結ぶフライトの運航を停止した。同じく、大韓航空も5日と6日の台湾便の運航を取りやめた。
また、ロシアが2022年2月24日にウクライナ侵攻を開始したが、オランダの航空会社KLMは同年2月12日、首都キーウとオランダを結ぶフライトを停止すると発表し、ドイツのルフトハンザも21日までにキーウ便を停止し、フランスのエールフランス、スイス国際航空、ユーロウイングス、オーストリア航空なども直前になって同様の措置を取った。
一方、欧州の格安航空会社(LCC)ウィズエアーは2023年3月、ウクライナ情勢の影響を受け、同月14日から欧州各地とウクライナの隣国モルドバの首都キシナウを結ぶ全フライトをストップする方針を発表した。
モルドバは戦闘当事国ではないものの、その影響が同国にも波及するリスクから、ウィズエアーは一歩早い危機管理措置を取ったといえる。