緊張続く台湾情勢 企業の駐在員退避の議論が広がる ポイントとなるのは“民間機の運航停止”だ

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緊張が続く台湾情勢。退避対策を真剣に検討する企業は全体の数として多いとはいえないが、「関連企業が始めたから次はわが社も」とその動きが広がっているのは間違いない。

ペロシ氏訪台の衝撃

台湾の桃園国際空港(画像:写真AC)
台湾の桃園国際空港(画像:写真AC)

 1年前の8月始め、当時米下院議長だったナンシー・ペロシ氏が台湾を訪問したことに対抗する形で、中国軍は台湾を包囲するように前例にない規模の軍事演習を実施した。

 中国軍は複数のミサイルを台湾周辺海域に向けて発射し、その一部は日本の排他的経済水域にも落下した。そして今日、中国軍機が中台中間線を超え、台湾の防空識別圏に侵入するなど、中国による軍事的威嚇は既に常態化しているが、2022年8月規模の威嚇は見られない。

 だが、台湾問題は米中対立のなかで最重要課題となり、台湾周辺の軍事バランスも中国優位に傾いているといわれるなか、今後最大のポイントとなるのは、2024年1月の台湾総統選挙で誰が指導者となるかだ。

 中国寄りの指導者が誕生すれば、有事のリスクは下がるかもしれないが、蔡英文氏の姿勢や政策を受け継ぐ指導者が現れれば、中国側の圧力はいっそう強まる恐れがある。

 一方、このような先行き不透明な情勢のなか、2022年8月のペロシ訪台は、台湾に進出する日本企業の危機感を高めるトリガーになったことは間違いない。

 筆者(和田大樹、外交・安全保障研究者)は安全保障分野の研究者として、海外進出企業に地政学リスクの観点からアドバイスをしているが、ペロシ訪台前はそれほど台湾情勢を問題視してこなかった企業人たちが、「これは現実問題だ」と真剣に退避対策を検討するようになった姿を鮮明に覚えている。

 当然ながら、今日、退避対策を真剣に検討する企業は全体の数として多いとはいえないが、

「関連企業が始めたから次はわが社も」

とその動きが広がっているのは間違いない。

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