フォードも依存、中国・車載電池最大手「CATL」はなぜ圧倒的に強いのか? バイデン政権の対中軽減策も、もはや形骸化か【連載】方法としてのアジアンモビリティ(4)

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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。

中国の産業政策に支えられたCATL

CATLのウェブサイト(画像:CATL)
CATLのウェブサイト(画像:CATL)

 フォードやテスラが、強い批判にさらされてまでもCATLとの提携にこだわるのは、当面CATLが圧倒的な優位性を維持すると見られているからだ。CATLは、高品質の電池を大量かつ低コストに生産できる世界有数の企業としての地位を確保している。

 CATLは2011年創業の比較的新しい企業だ。創業からわずか6年でパナソニックを抜いてEV用車載電池の出荷量で世界トップに躍り出た。

 創業者であり、現在董事長を務める曽毓群(Robin Zeng)は福建省寧徳市の出身で、上海交通大学で海洋工学を専攻し、中国科学院物理学研究所で博士号を取得している。国営の造船所で働いた後、広東省東莞市で磁気ヘッドを生産する日系電子部品企業に就職した。同社は当初香港資本だったが、日本の大手電子部品メーカーTDKに買収され、100%子会社となっていた。

 1990年代後半、携帯電話の急速な普及などによって民生用バッテリーの需要が急増した。曽はこのチャンスを生かすため、1999年に独立し、小型バッテリーを設計・開発・生産する寧徳新能源科技(ATL)を設立したが、2005年にTDKに買収されている。曽は、2011年、ATLの生産技術を基盤にしてCATLを操業した。ただし、設立の段階ではATLがCATLに15%を出資していた。

 そんなCATLが短期間で目覚ましい発展を遂げた理由は、中国政府の産業政策に機敏に対応したことだ。EVを中核とする新エネルギー車(NEV)の普及推進を目指す中国政府は、2015年に中国政府がリストアップした電池メーカーの電池を使用しているEV車のみが購入時の補助金の交付を受けられるという優遇策を打ち出した。

 これに対応して、CATLはATLとは完全に切り離され、100%中国資本の企業となったのだ。中国政府は、2016年から補助金政策の対象から、韓国製電池を搭載したNEVを除外した。中国国内の車載電池メーカーに対する明確な保護政策である。こうした自国産業の保護・育成という中国政府と政策と歩調を合わせることによって、CATLは圧倒的に有利な立場を築き上げてきた。

 中国政府とCATLは再生可能エネルギーの拡大という目標を共有しており、曾は中国人民政治協商会議の委員も務めているという。

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