鉄道会社・車両メーカーのつながり深い日本 ヨーロッパも同様? 10年が読めない「鉄道メーカー市場」を考える

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特定の鉄道会社とのつながりが深い日本の鉄道車両メーカー。欧州市場の現況はどうか。

欧州市場の現況

ボンバルディア買収により業界2位となったアルストム。最新のTGV-Mは同社を支える屋台骨となれるか注目される(画像:橋爪智之)
ボンバルディア買収により業界2位となったアルストム。最新のTGV-Mは同社を支える屋台骨となれるか注目される(画像:橋爪智之)

 一方で外国を見てみると、例えば欧州市場は、一部の工業水準が低い国を除き、過去には日本と同じように、それぞれ地場の鉄道メーカーが存在して、自国向けの車両を製造していた。

 ところが20世紀後半頃からメーカー同士の統合が進み、大きなメーカーへと集約されていった。2010年代に入ると、いわゆる「鉄道メーカーのビッグスリー」と呼ばれた、

・アルストム
・シーメンス
・ボンバルディア

が業界を席巻し、一時はこの3社だけで世界市場の過半数を占めることもあった。

 しかし、この3社の天下も長くは続かなかった。中国の国策で、国内メーカーを全て集約し、世界シェアトップとなる巨大企業、中国中車(CRRC)が誕生したからだ。売り上げの9割が国内市場向けで、今も急成長を遂げている中国国内の高速列車需要があるとはいえ、世界シェアトップという事実に変わりはない。

 その後、アメリカやアジアでも徐々に受注を獲得するようになっていくなか、ビッグスリーは1位の座を完全にCRRCへ明け渡し、他のメーカーにも後れを取るようになっていった。

 2021年1月には、ビッグスリーの一角であったボンバルディアがアルストムへ買収され、その名が業界から姿を消すことになった。ただし、かつての業界トップ3だった2社が一緒になったことで、CRRCに次ぐ業界シェア2位に返り咲いたことは朗報だったといえる。

 日本という特殊な市場から飛び出し、あえて群雄割拠する困難な欧州市場へと足を踏み入れた日立製作所は、安定と信頼を武器に、現在は世界シェア10位以内に入るなど、着実に存在感を示しつつある。

 英国での成功を足掛かりに、現在は欧州大陸側へも進出。業績不振となっていたイタリアメーカーのアンサルドブレダを買収し、信号・通信における最大手企業だったグループ企業アンサルドSTSの株式も取得。

 手始めにイタリア国内向け車両を中心に製造し、現在は電気・バッテリー・ディーゼルのトライブリッド車両「マサッチョ」の量産も開始。今後の成長が期待される。

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