「観光公害」が酷いのに、わざわざ“京都”に行く必要あるのか? という根本的疑問

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2023年上半期の訪日外国人客数は2019年同期比64.4%まで回復した。だが、定番観光地を訪れることに、そもそも意味はあるのか。

理想と現実

定番観光地のイメージ(画像:写真AC)
定番観光地のイメージ(画像:写真AC)

 では、旅行の醍醐味(だいごみ)を味わうために必要なものは何か。それは、

・自分で旅行プランを立てる
・自分だけの観光地を探す

ことだろう。インターネットを駆使し、定番観光地ではない自分だけの場所を探すのだ。

 観光公害に直面している定番観光地にとっても、こうした意識を広めることは解決策になるかもしれない。観光公害に苦しむ定番観光地と、まだ発見されていない観光地とのバランスがとれれば、ウィンウィンである。持続可能な観光のあるべき姿だろう。

 しかし、これはあくまでも理想だ。なんやかんやで、大半の旅行者は定番観光地を訪れるだろう。したがって、多様な観光の形を提案するためには、まず定番観光地に人が集中しないような

「強力な対策」

が重要である。

ヴェネツィアに学ぶ

ヴェネツィア(画像:写真AC)
ヴェネツィア(画像:写真AC)

 海外だが、定番観光地ど真ん中のイタリアの都市・ヴェネツィアでは観光公害によって混雑が常態化し、人口減少まで起きている。そこで、同市は観光客に推奨する「12のガイドライン」を定め、違反した場合は罰金を科している。ガイドラインとは分散観光の推奨と、行動制限からなる。

・歴史地区では、あまり知られていない場所を発見してください。
・歴史的中心部だけでなく、ラグーンの他の島々や本土も探索してください。
・地元の特産品や伝統的なヴェネツィア料理をご賞味ください。
・歩行者が通行しやすいように橋の右側を歩き、橋の上で立ち止まって写真を撮らない。
・モニュメントや教会堂の前、運河に下りる階段の上などでは昼食をとらず、適切な公共の緑地へ行くこと。
・サン・マルコ広場のモニュメントエリアでは、許可された飲食店以外での飲食は避けること。

どうだろうか。日本も同様のガイドラインが必要な時代になっていまいか。

 観光客が増えれば、モラルの低い観光客や質の悪い観光客が増えるのは避けられない。従って、そうした禁止事項を明確にしなければ、観光公害に苦しむ地域でも、その魅力を発見してもらうように導くことは難しいだろう。

 円安が確定した今、安価な旅行を提供する日本は、これまで以上に質の悪い観光客を呼び込むだろう。観光客が増えたのに地元民が減れば本末転倒だ。少なくとも、観光客の公共交通機関の利用を制限することは、早急に実施すべき対策だろう。

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