バスガイドは、なぜ「女性」ばかりなのか? 意外と知らない謎に迫る

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観光バスなどで、乗客の世話や観光地・風景の案内をするバスガイド。そんなバスガイドだが、最近では男性もちらほら見かけるようになったものの、一般的には女性のイメージが強い職業だ。

マイクなしでしゃべり続ける誇り高き職業

観光バスのシートのイメージ(画像:写真AC)
観光バスのシートのイメージ(画像:写真AC)

 多くの女性がバスガイドに憧れたが、仕事は簡単ではなかった。今のような研修制度はなく、先輩を見て覚えるのが基本だった。

 入社初日からバスに添乗して先輩の仕事を見学。4、5日すると台本が渡され、数日で暗記させられる。研修といえるものはそれだけで、その後すぐに「独車」すなわち一人前のガイドとして仕事に就くことになる。当時は、

「マイクなしで一日中しゃべり続ける」

仕事である。8時間コースともなれば、かなり過酷だった。それでも人気の職業だったのは、見合う給与を得られたからだ。

 後年、当時のバスガイドが記した手記にはこんな一節がある。女性バスガイド誕生から31年後の1959(昭和34)年の記録で、戦前の当時を振り返ったものだ。

「私たちはバス・ガールとか車掌と呼ばれるのを喜びませんでした。また、50円の初任給は私たちのプライドを支えるのに十分でした。当時50円といえば大学出の学士サマの初任給といくらも違わない金額です」(『日本週報』1959年8月1日号)

まさに、羨望(せんぼう)のまなざしで見られる職業だ。「大学出の学士サマ」といっても、大学全入時代の現在とは「大学出」の重み、社会的地位が違うのはいうまでもない。彼女たちはそれと肩を並べていたのである。

 そのような職業ゆえ、乗客から求婚は当然で、それどころか

「尋常のファンのたびを超えてメンメンたる胸中をうったえる男性の手紙」

も殺到したが、そういうものは会社が没収して身辺を守っていた。

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