自動車関連税の「基準」抜本見直し 都の提言の課題【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(4)

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東京都税制調査会が2021年度の答申を公表した。自動車の税制度について、従来の排気量基準を見直し、政府の「グリーン戦略」や都の「100%非ガソリン化」を意識した新たな基準の追加を提言しているが、そこには課題も残されている。

「100%非ガソリン化」5年前倒しの東京都が示した自動車税の今後

自動車の電動化に伴い税制に変化の兆しが生じている。写真はイメージ(画像:写真AC)。
自動車の電動化に伴い税制に変化の兆しが生じている。写真はイメージ(画像:写真AC)。

「令和3年度東京都税制調査会答申」が2021年10月22日に公表された。東京都税制調査会とは、21世紀にふさわしい税制のあり方について議論する知事の諮問機関として2000(平成12)年に設置されたものである。これまで、地方自治の確立に向けた税財政制度や、直面する税制上の諸課題について検討を進め、様々な提言を行ってきた。

 通常3年を1期としているが、2020年は新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、それに特化したものとなったことから、2021年は直近の4年間を総括したものとなった。

 その中で、自動車関連税制では、今後ガソリン車、ディーゼル車が減少し、電動車と呼ばれるハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)の増加が予想されることから、時代の変化に対応した税制度の構築が必要であると提言している。これについて紹介するとともに、筆者の考え方を述べたい。

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「令和3年度東京都税制調査会答申」が提言している骨子は、これまでの自動車税種別割は「排気量基準」であったが、それに加えて「CO2(二酸化炭素)排出量基準」も加えるという案だ。さらに新たな指針として、「重量基準」も追加導入することを提唱している。中長期的な視点として、走った分だけ課税する「走行距離課税」までも言及している。

 現在の日本の状況は、政府が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン戦略」で、2035年までに新車販売で電動車100%を実現すると表明している。また、東京都の小池百合子知事は2020年12月の都議会にて、都内で新車販売される乗用車は、政府より5年前倒しを行い、2030年までに「100%非ガソリン化」する方針を打ち出した。このような背景から、東京都としても、電動車の増加に対して、政府や他の道府県に先駆けて税制への対応を早める必要があり、今回の答申に反映されたと思われる。

 考えてみると、税制に関しては厳しさが増している。日本では少子高齢化が進んでおり、内閣府統計資料によれば、2020年の人口1億2571万人に対して、2035年は1億1522万人と、8.3%減少すると予測されている。さらに、近年は自動車の形態が所有から利用へと移行し、都市部では自動車を手放す人も増えている。特に若者の自動車離れが大きい。理由として、都市部では駐車場代の高額化、携帯など他費用への支出、伸び悩む所得などがあろう。また必要な時は、借りれば良いという考え方が浸透し、カーシェアリング登録者も増加している。

 さて、ではEV化が進む欧州はといえば、税制に関して、欧州委員会が2005(平成17)年に車体課税の2分の1にCO2排出量の要素を取り入れた課税とすべきとの指令案を公表した。このため、2021年現在、EU加盟国のうち21か国がCO2排出量を課税の基準に取り入れるなど、税制のグリーン化が進んでいる。

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