三菱自動車・新卒「賞与2倍」の衝撃 待遇改善は朗報も、古参社員にメリットある? 今後は社内“年収格差”拡大か
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業績回復が続いている三菱自動車は、2023年の新入社員夏季賞与(一時金)を従来の約2倍の「最大30万円」に引き上げた。しかも、2023年入社社員から初任給も引き上げており、待遇改善による採用力強化が狙いのようだ。
伝統的な報酬スタイルの変化につながる可能性
新人の報酬水準を上げることが、もしも全体の報酬水準を上げることの一環であるというだけならば、既存社員も恩恵を受けるわけであるから不満を持つこともなく、それほど大きな話ではない。
しかし、いくら業績が好調とはいえ、世界的な経済情勢不安のなか、報酬原資全体を恒久的に上げる判断は難しい。
となれば、結局のところ、新人の報酬の向上とは、「後払い」という
「報酬原資の配分方法」
を変える可能性があるのではないかと、筆者(曽和利光、人事コンサルタント)は考える。
インフレなどによる一定の底上げはあっても、本質的には高待遇にするというよりは、配り方を変えるということである。
どこかを上げれば、どこかを下げる
それはつまるところ、報酬のカーブを変えることにつながる。
新人のうちから高待遇にするとすれば、帳尻を合わせるためにどこかで報酬を削らなければならない。働き盛りの社員の報酬を削れば、転職などでの退職につながってしまうため、対象になりそうなのは
「シニア人材の報酬や退職金」
など、会社員人生終盤における報酬だ。これらはまだ確実に約束された報酬ではないので、コントロールしやすい。
報酬テーブル自体をあからさまにいじるのは組合や社員への印象が悪いのでできないが、報酬にひもづいている等級やグレードや職位への昇格率を下げることで、シニア人材全体の報酬額を下げることはできる。
報酬テーブルの改訂に比べれば、昇格率の低下を社員が気づくことは難しい。そうすることで、これまでは「後払い」で徐々にえび反りで上がっていた給料が、若いうちから高給になる代わりに、どこかで打ち止めになって
「報酬が上がらないカーブ」
になる可能性があるということだ。