「EVシフト」勢い止まらず 日本が“後出しジャンケン”で負ける根本理由

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世界のEV市場では、日系ブランドは「2.5%」しかシェアを獲得できておらず、残念ながら出遅れている。なぜか。

テスラ成功の要因

テスラCEOのイーロン・マスク(画像:AFP=時事)
テスラCEOのイーロン・マスク(画像:AFP=時事)

 新しい技術に高い価格を支払ってくれる「プレミアム顧客」や、一度に大量の車両やサービスを発注してくれる大企業など、収益性の高い特別な顧客は、どの企業も狙っていきたいセグメントである。

 例えば、テスラがEV事業を立ち上げ、難しいといわれていた自動車市場への参入に成功した要因のひとつは、このようなプレミアム顧客に向けて高価なEV車両を販売できたからだ。

 一定数しかいないプレミアムセグメントで、テスラは顧客を獲得し続けながら、ブランド力を高めていく。その一方で、EV市場で出遅れたメーカーは、アプローチできるプレミアム顧客が少なくなり、ブランド力の強化も難しくなるため、事業の収益性確保の点で苦労することが予想される。

パートナリングの椅子取りゲーム

EVシフトによるプロフィットプール変化に伴う業際の再定義(画像:野村総合研究所)
EVシフトによるプロフィットプール変化に伴う業際の再定義(画像:野村総合研究所)

 EVは電池コストが高いため、ガソリン車と同じ性能を実現しようとすると車両価格がどうしても高くなってしまう。逆にいえば、自動車メーカーはガソリン車ユーザーにEVを買ってもらうために、EVの車両価格をガソリン車と同じにすると赤字になってしまう。

 しかしEVはガソリン車に比べて、車両価格は高いが、電気代やメンテナンス費用などのランニングコストは安くなるという特徴がある。もしユーザーが、ガソリン車と同等のトータルコストを認めてくれるならば、自動車メーカーは車両価格で損しても、

「アフターでもうけるようなビジネスモデル」

を考えることができる。これを実現するには、自動車メーカーは事業領域を下流(車両販売後のサービス領域)に広げる必要がある。

 例えば、

・安全に関するソフトウエア
・保険などの金融サービス
・電力サービス

などである。

 その際に、自動車メーカーが自社にノウハウやリソースがない場合には、これを補完するための、パートナリング(または人材採用)が課題であり、勝負を左右する。これも椅子取りゲーム的な要素が高く、「後出しジャンケン」が負けにつながる要因といえる。

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