「EVシフト」勢い止まらず 日本が“後出しジャンケン”で負ける根本理由
世界のEV市場では、日系ブランドは「2.5%」しかシェアを獲得できておらず、残念ながら出遅れている。なぜか。
後出しジャンケンでは間に合わない
そうすると、三つ目の理由「電動車技術では先行していたため、追随は可能だ」が怪しくなってくる。
EVが研究開発フェーズにある間は、技術が競争要件の大きな比率を占めているため、追随が可能だったかもしれない。しかし事業化フェーズに入ってしまうと、競争は技術だけでは決まらない。市場が急拡大しているEV市場において、椅子取りゲーム的な競争要素が多く、
「後出しジャンケン」
が負け要因になる可能性がある。その理由を少し考えてみたい。
EV市場が急拡大するなか、自動車メーカーはリチウムイオン電池(LIB)の確保が課題となっている。特に、その材料となるリチウムなどの資源は電池メーカーだけでなく、自動車メーカーや政府も乗り出して、量の確保に動いている。
いち早くEVシフトを決めた企業は、資源メーカーと大きなボリュームで長期契約を締結し、有利な価格で取引している。しかし後になれば、よい条件の資源メーカーとは取引できなくなり、相対的に高い価格でしか資源を確保できなくなる。これは価格だけでなく、新たな競争軸であるGHG排出量についても同様のことが起こっている。
そのほか、近年では電池製造設備の確保も課題だ。今から設備をオーダーしても納入は1年以上先、リードタイム(所要時間)はさらに長期化傾向にある。
「遅れが遅れを生む」
状況だ。
たとえ、設備を調達できたとしても、「電池人材」を確保できず、工場の立ち上げが予定を大幅に遅れているケースが少なくない。
さらには、電池材料生産や電池組み立てでは多くの電力を必要とするので、安価な再エネ電力の確保がコスト競争力につながる。これも後発参入が不利になる要因といえよう。