駅で食べる「立ち食いそば」は、なぜあんなにうまいのか? 経済目線で分析する【短期連載】令和立ち食いそばビジネス考(3)
- キーワード :
- 鉄道, グルメ, 令和立ち食いそばビジネス考
「駅で食べる立ち食いそばは、なぜあんなにもうまいのか?」という素朴な疑問を、定性的(数値化できない要素)な目線、定量的(数値化できる要素)な目線、経済的な目線から解き明かしていく。
駅というロケーションの優位性

駅の立ち食いそばの優位性は、なんといっても“ロケーション”だろう。
店舗としてあえて集客をするまでもなく、人が集まるのだ。今でこそ、駅ナカビジネスが活発になり、駅ナカグルメや駅ナカスイーツ、駅ナカショッピングと飲食店の種類や業態が多岐に及んでいる。その昔は、立ち食いそば店、キオスク、お弁当屋、お土産物店が中心だった。ある意味、駅の立ち食いそばは、
「駅ナカビジネスの草分け的存在」
といえよう。
ここで、JR東日本のいくつかの駅の1日あたりの乗降人員(2022年度)をみてみる。
・新宿駅:60万2558人
・我孫子駅:2万6818人
・水戸駅:2万5161人
JR東日本の新宿駅は1日あたり60万人が利用している。乗降客ひとりが1日100円の買い物(現在100円で買えるものはほとんどないが)をしただけでも、1日
「6000万円」
も売り上げられる。駅の立ち食いそばも、そんな“数の力”が発揮される。
例えば、唐揚げそばで有名な弥生軒のある我孫子駅(千葉県我孫子)で、乗降客の5%が弥生軒のいずれかの店舗を利用し、平均客単価400円と仮定すると、26818×0.05×400で、1日あたり
「約53万円」
の売り上げとなる。
また、駅の立ち食いそばは、リピーターを通り越して、日常的な食事を目的としたヘビーユーザーを獲得しやすい点もメリットといる。もちろん、行列ができるくらいおいしいとまではいわないまでも、価格なりか少し上くらいの味と評価されることが前提となる。
駅内外で競争が激しい現代では、それなりの味を提供しなければ、駅構内に存在するだけの店に成り下がってしまう。