トラックドライバーの安全そっちのけ? 高速「80km制限撤廃」で置き去りにされる事故率と大きな疲労、このまま議論を進めて本当にいいのか
トラックドライバーが不足する「物流2024年問題」に対応するため、警察庁が高速道路を走る大型トラックの最高速度を現行の時速80kmから引き上げる方向で検討に入ったことが明らかになった。引き上げが実現すれば、交通規制の大転換となりそうだ。
最高速度の引き上げを後押しするもの
安全上の理由から実施されてこなかった最高速度の引き上げを後押ししてきたのは、高速道路の一部区間で、一般車両の最高速度が120km/hに引き上げられたことである。警察庁は、この引き上げを次の基準に基づいて認可している。
・渋滞を除いた平均実速度が100km/h以上であること
・死亡事故や傷害事故の発生率が高くない制限速度であること
・制限速度が120km/hに設定されている距離が20km以上連続していること
・安全上・円滑上の支障がないこと
スピードリミッターが義務化された当時は、速度超過は危険と判断されたが、今回は
「速度を上げても安全性は変わらない」
「安全性を考慮して検討する」
という意見が強まっている。また、先に普通車の制限速度を緩和したことで、大型トラックが時速80kmのままでは危険だという意見も出ている。
2024年問題の実のある解決策として提示された大型トラックの最高速度引き上げ。しかし、荷物の配達スピードが速くなり、労働時間が短縮されるという期待は単純すぎる。この期待は、トラックが増速した場合に運転手の疲労と事故率が上昇するというリスクを無視している。
さらに、高速道路での大型トラックの事故は一般車両の事故に比べてダメージが大きく、後始末に時間とコストがかかる。これらの負の影響は、大型トラックの速度引き上げによって得られるとされる利益をはるかに上回る。
このような観点から見れば、「80km制限撤廃」の議論は、
・安全性
・経済性
・公共の利益
を全体的に考慮していない。
結局のところ、私たちが重視すべきはトラック運転手の生命と健康、そして私たち全員の安全である。