トラックドライバーの安全そっちのけ? 高速「80km制限撤廃」で置き去りにされる事故率と大きな疲労、このまま議論を進めて本当にいいのか
トラックドライバーが不足する「物流2024年問題」に対応するため、警察庁が高速道路を走る大型トラックの最高速度を現行の時速80kmから引き上げる方向で検討に入ったことが明らかになった。引き上げが実現すれば、交通規制の大転換となりそうだ。
大型トラックの制限速度引き上げ

1992(平成4)年6月、警察庁は道路交通法を改正し、大型トラックの一般道の法定速度を50km/hから60km/hに引き上げている。これは、地方自治体が独自の判断で実施していた制限速度の緩和を追認したものだった。
一般道で初めて制限速度が引き上げられたのは1990年2月、栃木県が前年に4車線道路が完成した宇都宮市の国道4号で実施した。その理由は次のとおりである。
・道路の設計速度は時速80km
・深夜の交通量の半分は大型トラックである
・高速を走る一般車が大型トラックを無理に追い越そうとして事故が多発している
1992年に警察庁が道路交通法を改正した際にの根拠も示しておこう。
・法定速度が50km/hの道路でも、実際には85%の車両が60km/hで走行している。
・実勢速度に合わせて法律を改正することで、自動車の流れがスムーズになり、都市機能が回復する。
こうしてみると、1990年代から2000年代前半にかけては、車種に関係なく制限速度を高いほうに統一する、あるいは低い車種の制限速度を引き上げて速度差を小さくし、自動車の流れをスムーズにして、安全性を向上させる考え方が支持されていたことがわかる。