トラックドライバーの安全そっちのけ? 高速「80km制限撤廃」で置き去りにされる事故率と大きな疲労、このまま議論を進めて本当にいいのか
トラックドライバーが不足する「物流2024年問題」に対応するため、警察庁が高速道路を走る大型トラックの最高速度を現行の時速80kmから引き上げる方向で検討に入ったことが明らかになった。引き上げが実現すれば、交通規制の大転換となりそうだ。
最高速度引き上げの裏に欧米の「外圧」

それから60年あまりの間の状況をまとめると、次のとおりとなる。
・普通車や大型トラックの最高速度を引き上げる動きは一度もなかった
・軽自動車とオートバイは、最高速度が80km/hから100km/hに引き上げられた(2000年10月の法改正)
後者の引き上げの理由は、
「外圧」
だった。
警察庁がオートバイの制限速度引き上げを検討し始めたのは、1997(平成9)年である。オートバイが大型トラックと同じ速度で車線の左側を走ると、オートバイ側の視界が悪くなり、他の車両から見えなくなって危険だという指摘があった。
しかし、警察庁がこの問題を検討し始めたのは、危険だからというより、欧米諸国から日本政府に対して
「最高速度の引き上げ要請」
があったからだ。
諸外国が道路交通法に参入してきたのは、大型二輪車の市場開拓のためであることは当時盛んに報じられている。
これを受けて政府は1999年、規制緩和推進3か年計画に最高速度引き上げの是非を調査・検討することを盛り込んだ。その後、警察庁は次のような結論を示した。
・一般車と同じ速度にすることで、追い越しの危険性が減り、車の流れがスムーズになる
・実験の結果、時速100kmでもドライバーの疲労度や車両の安定性はほとんど変わらなかった。
この結論に基づき、軽自動車と二輪車の最高速度は100km/hに引き上げられたのである。
ちなみに、当時米国が求めていた高速道路でのふたり乗り解禁については、警察庁が難色を示したものの、2005年に一定の条件付きで解禁された。
一方、大型トラックは「外圧」もなく、なにもないままに60年が過ぎたというわけである。