成田空港「ワンターミナル構想」に隠れた、“空港アクセス改善”という超重要事項 鉄道混雑率100%超にどう対応するのか

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首都圏の玄関口である成田空港は、離れた場所に三つのターミナルが存在するが、今後、大きな変貌を遂げることになりそうだ。

ターミナルが抱える問題

成田空港第3ターミナルへの通路(画像:写真AC)
成田空港第3ターミナルへの通路(画像:写真AC)

 また、航空会社の枠組みの変化もターミナル再編が求められる理由だ。

「『新しい成田空港』構想中間とりまとめ」では、ターミナルが抱える問題のひとつを次のように説明している。

「ターミナルは3大アライアンスの枠組みだけでなく、利用者のニーズによっても制限される。3大アライアンスの枠にとらわれない航空会社間の様々な提携、国内外LCCの就航、国内線の成長に伴う国際線と国内線の乗り継ぎ便の増加など、航空会社のニーズも変化している。一方、成田空港の旅客ターミナルのレイアウトや設備は、旅客の利便性の低下や、航空会社やCIQ(註:税関・出入国管理・検疫)等の運営負担の増大を招いており、柔軟性や効率性の向上も求められている」

 三大アライアンスとは、

・ANAが加盟する「スターアライアンス」
・JALが加盟する「ワンワールド」
・日系エアラインが加盟しない「スカイチーム」

である。

 従来、アライアンスはひとつのターミナルに集約されており、乗り継ぎの際は同じターミナル内を移動する必要があった。航空会社からすれば、メンテナンスや物品の調達が共同で行われるため、同じターミナルにあることは都合がよかったのだ。

進むLCC再編

成田空港第3ターミナル(画像:写真AC)
成田空港第3ターミナル(画像:写真AC)

 いま、航空会社の結びつきは複雑になりつつある。とりわけ、LCCの再編は新たな局面を迎えている。

 ANAグループ傘下のピーチ・アビエーションは2019年にバニラ・エアを統合。JALは2021年に中国の春秋航空との合弁会社であったスプリング・ジャパンを子会社化している。

 現在、JALグループ、ANAグループともにLCC参画を進めており、その概要は以下のとおりである。

●JALグループ
・スプリング・ジャパン
・ジェットスター・ジャパン
・ジップエアトーキョー

●ANAグループ
・ピーチ・アビエーション
・エアージャパン

 このように、アライアンス間の移籍だけでなく、フルサービスキャリアが傘下にLCCを持つことも当たり前になっている。

 こうなると、各系列会社同士で同一のターミナルに入居しているのが理想的だ。しかし、実際にはターミナルごとにチェックインなどのオペレーションシステムが異なるため、移設は容易ではなく、オペレーションに負担がかかっている。

 近い将来、成田空港の年間発着回数は50万回を超えるといわれている。その場合、LCCが発着回数の約半分を占めると予想され、運営負担はさらに増大することが見込まれる。この解決策としてワンターミナルは望ましい。

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