欧州初のトライブリッド車両! あなたは「マサッチョ」を知っているか

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2023年6月、筆者はマサッチョの製造現場である同社ピストイア工場を取材、製造中の様子から、完成車両のデモンストレーション走行まで見学した。そこで見たものとは。

トライブリッド仕様である理由

マサッチョの台枠。溶接には摩擦攪拌接合が用いられている(画像:橋爪智之)
マサッチョの台枠。溶接には摩擦攪拌接合が用いられている(画像:橋爪智之)

 まずはパンタグラフを上げて電車として走行し、その後パンタグラフを下してディーゼルエンジンを起動。今度はディーゼルエンジンで発電しながら走行し、さらにディーゼルエンジンを停止。バッテリーのみで走行を行った。これらのモード切り替えは、運転台のタッチパネルもしくはスイッチで行い、瞬時に切り替わる。

 マサッチョは、現在はトレニタリアのみと契約を結んでいるが、同車は相互運用性の技術仕様(TSI)に準拠しており、欧州圏内であればどこの国でも運用が可能だ。欧州は、今も全体の約40%が非電化となっており、そこではディーゼル車両が主に使用されているが、環境問題が叫ばれるなか、ディーゼルに替わる環境に優しい動力源への転換は喫緊の課題だ。

 バッテリー技術は日進月歩で進化しており、今も開発が進められているが、鉄道車両を動かすとなると、現時点ではまだバッテリーだけによる運用は距離が限られてしまう。マサッチョのバッテリー航続距離は走行環境によって約10~15kmで、長距離非電化路線での運用は難しい。

 また最高速度も、電気やディーゼルで動かす場合は160km/hであるのに対し、バッテリーでは100km/hに制限されてしまう。ディーゼルエンジンを搭載したトライブリッド仕様としたのには、こうした理由があった。

 マサッチョは、バッテリーを併用することで燃料消費量、排ガス量ともに従来比50%の大幅削減を実現している。

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