進む「原子力船」開発 日本勢も参画 核融合炉・溶融塩炉搭載のコンテナ船は実現するか
脱炭素化に向けて開発が進む原子力推進船
国際海運の脱炭素化に向けて、各国でGHG(温室効果ガス)を排出しないゼロエミッション船の開発が進められているが、その動力源として「原子力」への注目が集まっている。ノルウェー船級協会(DNV)は、日本の造船大手ジャパンマリンユナイテッド(JMU)や海運大手・日本郵船などと連携して核融合炉を搭載した2万TEU型コンテナ船のコンセプトを開発(1TEUは20フィートコンテナ1個分)。英国を拠点とする原子力エンジニアリング会社のコア・パワー(CORE POWER)は、2025年を目標に「船舶用溶融塩炉(m-MSR)」の開発に取り組む。韓国サムスン重工業も溶融塩炉(MSR)を搭載した原子力推進船の研究を行っているほか、日本の三菱重工業も加圧水型軽水炉(PWR)をベースに船舶搭載を想定した軽水小型炉の開発を進めている。
DNVは2021年6月に発行したテクノロジー・プログレス・レポート(TECHNOLOGY PROGRESS REPORT)の中で、核融合コンテナ船(FPCV ; FUSION POWERED CONTAINER VESSEL)を紹介した。同コンセプトは、DNVと海上輸送のゼロエミッション化を実現する新技術の可能性を調査することに合意したスイスの重電大手ABB、カナダの核融合炉開発企業ジェネラルフュージョン(GF)、JMU、日本郵船の各社が協力して作成しているものだ。
核融合コンテナ船のデザインは、JMUの2万TEU型超大型コンテナ船(ULCV)のレイアウトに基づいている。核融合エンジンは居住区の下と船首の間に密閉して搭載。熱交換器、蒸気タービン、発電機で構成された蒸気プラントはエンジンルームに隣接するように配置した。補助動力装置も核融合システムのコールドスタートを容易にするために、居住区の下に配置されている。プロペラは後部機関室の六つの電気モーターで駆動させる。
エンジンルームのスペースが大きくなったため、コンテナの積載個数は基準船に比べて減少し1万9338TEUとなった。設計喫水時の載貨重量は14万7700重量トン、速力は28ノットとしている。
エンジンについては、ジェネラルフュージョンが開発中である「磁化標的核融合(MTF)」方式の核融合炉が採用される可能性が高い。
MTFはプラズマを圧縮することで核融合を得る手法で、圧縮システム、液体金属チャンバー、プラズマインジェクターなどのコンポーネントで構成されている。実際の発電では核融合の過程で加熱された液体金属から熱を取り出して蒸気を作ってタービンを回し、電気を発生させる。コンテナ船にはこうした核融合エンジンを含む燃料供給システムに加え、核融合エンジンをピストンさせるための蒸気ループ、熱交換器に接続する液体金属ループを設置する。