物流危機で新たな問題発生 荷主の危機感につけ込む「ブラック運送会社」が暗躍中、希望なき時代が生んだ現象か
あえてブラックな労働を貫く運送会社
まともな運送会社であれば手を引くような運送案件をハイエナのようにあさり、商機を拡大している運送会社は実在する。
2024年問題については、当然、荷主側も困っている。その「困っている」につけ込んで、通常よりも高い運賃で案件を獲得するというわけだ。
とはいえ、このような運送会社は、行政指導・処分が、怖くないのだろうか。
「2024年問題ねぇ……。関係ないでしょう。そもそも、行政処分なんてそうそう食らうもんでもないし」
このようにたかをくくっている運送会社の経営者も、残念ながら存在する。
残念ながら、運送会社の数に対し、運輸局、あるいは労働基準監督署などの“取り締まる側の人員数”は圧倒的に不足している。ドライバーにブラック労働を強いていても、巡回指導すら入ったことがない運送会社はたくさん存在するのだ。
もうひとつ、別な背景もある。勤務するドライバー自身が、ブラックな働き方を行うことで、高い収入を得ることを望んでいるケースがあるのだ。
あくまで一般論だが、長時間労働に対する摘発の大半は、従業員ないし元従業員によるタレコミに起因するという。当然だろう。名の知られた大企業ならともかく、中小企業に対し、労基署担当者が「あの企業はブラック企業らしい」とアンテナを働かせるのは容易ではないからだ。
だが、当の従業員がブラック労働を望んでいたらどうだろう。筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)が現役トラックドライバーだった頃、それこそ睡眠時間を削ってハンドルを握り相応の収入を得ていたが、改善基準告示など、コンプライアンスにがんじがらめにされた現在のドライバーは、長時間働きたくても働くことは本来できない。
しかし、ドライバーも承知の上でブラックな働き方をあえて容認している運送会社は存在しており、こういった運送会社は従業員からのタレコミも行われないため、監査の網から外れてしまうという事情もある。
こうしたブラックな運送会社は、2024年問題対策を行わない(あるいは行おうとしない)荷主にとってありがたい存在となる。
このようにして、ブラックな運送会社も、2024年問題を契機に「運送会社が荷主を選ぶ」ことができる立場になりつつある。