物流危機で新たな問題発生 荷主の危機感につけ込む「ブラック運送会社」が暗躍中、希望なき時代が生んだ現象か
2024年問題が荷主に与えた影響
ところが最近、状況が変わってきた。契機は「物流の2024年問題」(以下、2024年問題)である。
2024年問題は、トラックドライバーの年間時間外労働時間を960時間以内という上限を設けることにより生じる諸問題を総称するものである。
この時間外労働時間の上限を破った企業には、「6か月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科され、また厚生労働省によって企業名を公表される恐れもある。さらに、悪質な運送会社に対しては、運輸局から事業停止などの、より厳しい行政処分が課される可能性もある。
荷主からすれば、大切な貨物輸送を任せている運送会社が事業停止に陥り、「モノが運べない」という事態に陥るのは“悪夢”である。それが小売りであれ、あるいは企業間取引であれ、モノがなければ取引は成立しない。
旧来の感覚であれば、「モノを確実に輸送する」というのは、例えば「交通事故を起こさない」といった、主として安全対策に依存するものだった。しかし、2024年問題は、事業停止などの行政処分を、よりリアルで現実的な「モノが運べない」というリスクに押し上げたのだ。
「2024年問題」で注目集めるホワイト企業
そうはいっても、長時間労働が常態化している運送業界では、2024年問題対策(≒時間外労働時間の抑制)を進めるのも簡単ではない。
2019年の統計データを基にした調査では、全トラックドライバーの26.6%が物流の2024問題で問題となる年間時間外労働時間960時間以上に相当する、
「年間の拘束時間3300時間」
以上働いていると試算している
だから、行政処分を受ける心配のないホワイトな働き方をしている運送会社に、荷主からの注目が集まるようになりつつあるのだ。食品配送を行っているある運送会社ではこれまでの3倍近い運賃で、新規案件を獲得できる事例も出てきたそうだ。
「間違いなく、『荷主が運送会社を選ぶ時代』から、『運送会社が荷主を選ぶことができる時代』へと変化しつつあります」と同社は語る。
これまで自社の都合で、運送会社・ドライバーに長時間労働を強いてきた荷主が、2024年問題を契機にホワイトな運送会社を求めるという業界構造の変化は皮肉である。
だがこれも、2024年問題によって、物流業界のあしき慣習に対して浄化作用が働き始めている証しなのだろう。