日本の物流コストに大打撃? パナマ運河「水位低下問題」が全然“対岸の火事”じゃないワケ

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今、パナマ運河の水位低下が問題になっている。この水位低下により、ここ数か月にわたってパナマ運河庁により、喫水制限が設けられてきた。

検討されている水位低下対策

熱帯雨林(画像:写真AC)
熱帯雨林(画像:写真AC)

 使用する水の量と同じ水量の水が入ってこないと、パナマ運河の水位が低下するのは自然な流れである。

 パナマ運河の水位低下の原因は、ヨーロッパでは地球温暖化による

「降水量の減少」

にあると報道されているが、一方で異なる見解もある。

 国際協力機構(JICA)の資料によると、パナマ運河の水位低下は以前から問題視されており、パナマ運河の水源となる山における

「無計画な熱帯雨林の伐採」

に原因があるという。保水力がなくなり水源の水が枯渇するだけでなく、土砂が流出して運河が浅くなるという具合だ。熱帯雨林の回復については、JICAの技術協力により2000年から2005年にかけて実施された「パナマ運河流域保全計画プロジェクト」がある。

 とはいえ、国土の約70%から約45%にまで低下した森林面積を回復させるには、相当の時間が必要となる。また、降水量そのものが減少しているのであれば、追加の対策も必要となる。

 現時点では、

・運河の浚渫(しゅんせつ、水底の土砂などを掘りあげる工事)
・節水装置(節水池)の設置
・新たな水源確保
・海水の淡水化利用

などの対策が検討されているが、解決には当分時間が必要となる上に、方法によっては通行料金の上昇につながりかねない。

 パナマ運河の水位低下で最も影響を受けるのは、アジア~米国東岸航路である。

・船の墓場とも呼ばれているホーン岬を迂回する
・思い切ってスエズ運河経由にする
・米国西海岸から陸送する

などの案もあるが、どれも決め手に欠けるといったところだろう。

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