大企業はなぜ有名人を“社外取締役”に起用するのか? スズキは「高橋尚子」氏、いったい何を期待しているのか

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最近、さまざまな企業で著名人の社会取締役就任が続いている。スズキは高橋尚子氏を迎えている。その背景にはいったい何があるのか。

「世間の常識」をもたらせるか

経済産業省・2020年「社外取締役の現状について」より(画像:経済産業省)
経済産業省・2020年「社外取締役の現状について」より(画像:経済産業省)

 そうすると、元々の意図から考えて社外取締役に適任である人の条件は

「(その会社の事業や経営に対して)あまり個人的な思想を持っておらず(あるいは持っていてもそれを横に置いておくことができて)、極めてフラットな視点で経営に対して判断ができること」

ではないだろうか。

 要するに「世間の常識」をもたらす人ということだ。そういう意味では、市民の常識を判決に取り入れることを目的にした“裁判員制度”にも似ている。

 事業経営判断に必要な専門性は社内から登用した取締役が担い、それが世間的な常識に照らし合わせても、異常な判断になっていないかどうかという客観性を社外取締役が担うという役割分担をすることで、株主のために公正な経営判断を行うというわけである。

 特に上場企業であれば、世間一般の人が広く株主になっているため、とても納得いく体制と言えよう。

著名人は世間の支持あってのもの

経済産業省・2020年「社外取締役の現状について」より(画像:経済産業省)
経済産業省・2020年「社外取締役の現状について」より(画像:経済産業省)

 さて、著名人の社外取締役の意味を改めて考えてみたい。

 著名人は世間から支持されることで生計を立てており、アスリートや芸能人など、特殊技能自体が評価されてその地位を得た人が多い。

 こと社外取締役に起用されるような、彼らが第一線を退いた頃からは、過去に特殊技能を身につけた努力なども含めた、現在の

「全人格的な評価」

によってその地位が成り立っている(もちろん、第一線の人が社外取締役になっているケースも多々あるが)。

 そういう著名人がもし、社外取締役として「世間の常識」から外れた判断をしたならばどうなるだろう。自らの基盤となる

「世間からの支持」

を失うことになる。つまり、著名人たちは社外取締役にはうってつけの人ではないかと思うのだ。

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