自動車免許を取ると、なぜ「原付」も運転できるようになるのか?

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普通自動車免許を取ると、原付も運転できるようになる。その背景を調べたところ、時代とともに変化してきた運転免許の歴史があった。

自動車を入手してから免許取得

原付(画像:写真AC)
原付(画像:写真AC)

 免許制度が全国一律で行われたのは、自動車の普及が加速してからだ。

 米国で開発されたフォード・モデルTは、大量生産の先駆けとして知られている。この自動車は日本にも輸入され、第1次世界大戦による好景気を迎えると、その数は増した。これによって自動車の数が増え、より厳密な制度が設けられた。このとき初めて、試験に合格して免許が交付されるものになっている。

 この制度で運転免許は

・何でも運転できる「甲種」
・特殊車両に限定した「乙種」

の二種類に分類されている。現在と大きく異なるのは、どちらの免許も、交付の条件として「車体検査証」が必須だったことである。

 つまり、免許が交付されてから自動車を買うのではなく、自動車が既ににあることが免許の条件だった。試験の際にも自分で自動車を持ち込んでいた。ただ、これは四輪車に関してであり、二輪車は当時対象外で、免許がなくても乗れた。

「自転車の延長線上にある乗り物」

自動車(画像:写真AC)
自動車(画像:写真AC)

 二輪車がようやく制度の枠内に収められたのは、1933(昭和8)年実施の「自動車取締令」の全面改正によってだ。このとき、乙種免許はいくつかに分類されているが、そのなかに普通免許(四輪普通車免許)とは別に、

「小型免許」

が設定された。

 これは、排気量750ccまでなら自動車でも二輪でもどちらも運転できるもので、普及が著しかった小型自動車を想定した新たな分類だった。ただ四輪車と異なり、二輪車は申請すれば試験なしで交付された。

 戦後になって免許制度は再び改正され、1947年には初めて二輪車だけを対象にした免許制度が制定されている。これは、従来の小型免許を細分化したもので

・小型三種:二輪車に限り無制限
・小型四種:4ストローク150ccまで、2ストローク100ccまで

の2種類に分類されていた。

 この制度では二輪車にも試験が導入されているが、その内容は口頭による面接試験のみだった。対して原付は、自転車と同じ「軽車両」の扱いであり、制度の対象外となっていた。

 原付に対しての制度が定められたのは、1952年の「道路交通取締施行令」からである。このとき、原付は審査を受けて運転許可を得る許可制とされた。免許ではなく、審査だったのは、当時の原付が

・自転車に補助エンジンを後付けしたもの
・ガソリンエンジンとペダルの両方がついているモペッド(ペダル付原付)

だったためである。

 ようは「オートバイの下位」ではなく、

「自転車の延長線上にある乗り物」

という認識だったため、免許までは求められなかったのだ。その後、原付で免許制度が導入されたのは、1960年の制度改定によってだった。

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