“園児置き去り事故”を根絶したければ、各幼稚園の「ローカルルール」を結集させなさい

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子どものバス置き去り事故の再発を防止するためには、何をするべきなのか。心理学を手掛かりに考える。

「リスクホメオスタシス」という概念

幼児置き去り検知システム市場。成長要因の貢献(画像:SDKI Inc.)
幼児置き去り検知システム市場。成長要因の貢献(画像:SDKI Inc.)

 次に、「安全装置」が人間のリスク認知や行動に与える影響について考えてみよう。人間は安全装置に依存する生き物である。カナダの心理学者ジェラルド・ワイルドは、これを

「リスクホメオスタシス」

という概念で説明している。ホメオスタシスは例えば私たちの体が震えたり汗をかいたりして体温を一定に保とうとするような機能を指す言葉だが、ワイルドはこの関係が「感じたリスク」と「行動」の間にも成り立つとした。

 安全装置の導入によって安全になったことを人間が感じ取ると、人間は「安全になった分」をそのままにするのではなく、

「効率を優先する行動」

を取ってしまう。

 その結果、私たちの体温が一定に保たれているのと同じように、安全装置を導入してもリスクレベルは安全装置導入前と同じくらいに保たれてしまうというのだ。確かに、置き去り防止装置がついて「子どもの置き去りは機械が防いでくれる」と思えば、スタッフのチェックはこれまでほど入念ではなくなるかもしれない。

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