日本の“EV普及”の本丸は「商用EV」拡大だ 軽貨物車という固有カテゴリー生かせ
G7サミットのプレゼンテーションのなかに、日本が進むべき方向性を表明したある展示があった。トヨタ、ダイハツ、スズキの三社の共同開発による軽商用EVバンのプロトタイプのプレゼンテーションだ。
2035年、商用車の電動化は半数以上に

ちなみに、先に挙げた日本自動車販売協会連合会のデータによると、国内で登録されている軽貨物車はおおむね約40万台前後だ。小型貨物車についてはおおむね約25万台前後である。両カテゴリー合わせて約65万台。この数字の中に現時点でEVが占める割合はごくわずかである。
これはEV化が最も進んでいる乗用車においても、2021年の段階でのその普及率となるとBEVが0.88%、PHEVが0.95%、燃料電池車(FCV)が0.1%と、全て合わせても2%以下であることを考えれば当然である。
こうした状況であれば、前述したとおり、運用においてより電動化に適していると思われる商用車にEV普及拡大の役割を担ってもらうというのは、ある意味自然な帰結である。
今後、商用車を通じてEVの生産量が大幅に増えることになれば、その製造コストの低下も大いに期待できる。軽貨物EVなど用途を限定したモデルであれば、なおさらコスト低減の可能性が高まるというものだ。
ある民間シンクタンクの調査によれば、2025年の段階で全世界の商用車に占める電動化の比率は10%に。さらに、その10年後の2035年には
「50%」
に達するとの予測も出ている。
これは全世界を対象とした推測値であり、日本の場合がどうなるかは正直わからない。その一方で、軽貨物車という
「日本固有のカテゴリー」
が存在していることは強みになる。この分野でのEV化を加速することができれば、推定できる未来図も大きく変わってくる。
軽貨物車のEV化推進が、日本のEV政策において極めて大きな影響力を果たす。G7での軽貨物EVのプレゼンテーションは、数年後には
「あの展示こそが時代が動くきっかけだった」
と後に語られるエピソードになる。そんな未来が訪れることを期待したい。