オール中国に屈した「日本の鉄道」 ジャカルタ・バンドン高速鉄道「350km達成」が示した埋められぬ実力差、中古車両も購入禁止で今後どうなる
「オールチャイナ」という脅威
そもそも、2019年開業というのはジョコウィドド大統領2期目の再選(2019年9月)を中国が支援するために設定したスケジュールである。
結局、もくろみ通りに着工はできず、空白の3年間を経て、契約から8年の歳月をかけて完成する高速鉄道であるが、2023年開業というのは、2015年当時の日本側が提示したプロポーザル(提案)と同じである。要するにこの何も進まなかった3年間の遅れを中国は見事に挽回したといえる。
ジャカルタ~バンドン高速鉄道は、中国、インドネシア両国の国営(国有)企業を中心とする民間プロジェクトとして進められており、日本の政府開発援助(ODA)プロジェクトに見られるような、企業の複雑な入札プロセスが存在せず、そもそも実際の事業に加わる「プレーヤー」の数が極限まで絞られている。
MRTプロジェクトのときに見られたような、受注後の日系企業同士での足の引っ張り合いや、元請け企業から下請け、そして孫請け企業への丸投げに伴う時間やコストの浪費もない。つまり、KCICに出資する
・中国水利水電建設集団(Sinohydro)
・中国中鉄(CREC)
・中国鉄路通信信号集団(CRSC)
・中国中車(CRRC)
・中鉄国際集団(CRIC)
の5社が、土木、軌道・信号・通信、車両といった各パッケージをそれぞれ担当している。見掛け倒しの「オールジャパン」の真逆を行く、本物の
「オールチャイナ」
である。
中国の威信をかけ、一丸となって工事を進める姿、特に、この最後の1年の追い込みには目を見張るものがあった。そのなかで、レール敷設用機材を大破させるという事故が発生したわけだが、レール敷設開始からわずか1年で東南アジア最速、356km/h到達というこの出来事は、そんなアクシデントすら、
「ちっぽけなもの」
と思わせるほどの威力がある。
なんといっても、ジャカルタ中心部から郊外のブカシやボゴールといったベッドタウンの自宅に帰るよりも、下手をすればバンドンに到着する方が早くなるわけだ。