トヨタ「bZ4X」ホンダ「e:NS1」 EVの名前はなぜ“英語”と“数字”の羅列ばかりなのか?

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EVは従来のラインアップからモデル名を踏襲せずに、全く異なるアプローチでネーミングされることが多い。具体的にいえば、「アルファベットと数字の組み合わせ」である。

テスラのモデル名に込められた思惑

プレス発表するイーロン・マスク氏(画像:テスラ)
プレス発表するイーロン・マスク氏(画像:テスラ)

 テスラのEVは、2008年に発売された最初のモデル「ロードスター」を除き、

・モデルS
・モデル3
・モデルX
・モデルY

の順に発売された。

 同社最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は、これらのモデル名を並べて「SEXY」としたかったようだが、「モデルE」はフォードがすでに商標登録しており、その思いは叶わなかった。苦肉の策として「E」を反転させた「3」としている。

 今後はコンパクトモデルが発売される見通しだが、どのようなネーミングとなるだろうか。

長年愛されているモデル名は数多く存在

「シボレー・サバーバン」(画像:ゼネラルモーターズ)
「シボレー・サバーバン」(画像:ゼネラルモーターズ)

 EVが本格的に投入されてまだ間もないため、そのモデル名はさほど浸透していないが、数十年間も使われ続けているものも数多く存在する。

 ゼネラルモーターズ「シボレー・サバーバン」は、1935年の発売開始以来、実に90年近いロングセラーとなっている。日本ではあまりなじみのないが、米国ではフルサイズピックアップの代表格として君臨している。

 同じくゼネラルモーターズの「シボレー・コルベット」やフォードの「Fシリーズ」なども70年以上の歴史がある。

 日本車では、トヨタのランドクルーザーやカローラ、ホンダ・シビックなどが長年にわたって定着し、代目とも称されるが、長年親しまれたモデル名は、すぐに車両のイメージを連想しやすく、愛着も湧きやすい。

EVモデル名の起源

「Impact」(画像:ゼネラルモーターズ)
「Impact」(画像:ゼネラルモーターズ)

 アルファベットや数字が並ぶEVモデル名の起源は、1996年にゼネラルモーターズが発売した世界初の量産EV「EV1」といわれている。

 1990年にロサンゼルスモーターショーで出品された「Impact」が前身だが、量販モデルは「EV1」に変更された。当時の米カリフォルニア州ゼロエミッション(ZEV)法に準拠し、リース契約で1117台が販売された。

 当時、画期的なEVが誕生したと話題を呼んだ。初代EVとして大きな存在感を示すこの「EV1」は、その後に誕生した数々のEVに多大な影響を与え、アルファベットと数字を組み合わせたモデル名が多用されるに至ったとされる。

EVの無機質なモデル名は定着するか

「アイオニック5」(画像:ヒョンデ)
「アイオニック5」(画像:ヒョンデ)

 冒頭で述べたように、自動車メーカー各社は「EVシフト」の渦中にあり、EV開発競争の真っただ中にある。そうした環境下で次々に新しいEVモデルが誕生することは、自動車産業の進歩を実感できる瞬間でもある。

 しかしながら、無機質なネーミングにはとっつきにくく、どうもピンとこない。EVを購入する際にモデル名が左右することはほとんどないが、愛着が湧くようなモデル名は今後に生まれてくるのか。

 その意味でのベストプラクティスは、トヨタのプリウスだ。ハイブリッド車を世に送り出して25年余りが経過した現在も、その代名詞として地位を確立した。

 ヒョンデ「アイオニック」、日産「アリヤ」、ポルシェ「タイカン」などもEVの代名詞となる候補として挙げておきたい。いずれも無機質なネーミングではなく、EVにふさわしい新鮮な響きを放っている。

 EV開発競争で鎬(しのぎ)を削る各社には、自動車本体の性能向上とともに、ネーミングにおいてもそのセンスが問われているのだ。

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