「電車内の化粧」を嫌っていたのは、男性より“女性”だったという意外な現実

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「電車内の化粧」は電車内の迷惑行為のひとつだ。民鉄協アンケートからその変遷をたどる。

男性より女性の方が不快を痛感

「電車内の化粧」イメージ(画像:写真AC)
「電車内の化粧」イメージ(画像:写真AC)

 このアンケートでは、2009(平成21)年から男女別のランキングを出している。「車内での化粧」がランクインしていたのが2016年までなのだが(2017年からランキング縮小で上位のみ表示)、この8年間の結果を比べてみたい。

 例えば2015年は、男性ランキングでは「車内での化粧」は9位で16.0%、女性ランキングでは7位で18.9%だった。8年間のうちほぼ、男性ランキングにおける方が順位が低く、割合も低かった。男性よりも、

「女性の方が不快に感じていた」

ことになる。

 SNSを見ると、女性らしきアカウントで多く言われていたのが、まず

「シンプルにみっともない行為」
「化粧品のにおいが気になる」

ことだった。

 また、女性で化粧する人だからこその意見もあって、

「粉が飛ぶ」
「何かの拍子にぶつかって、メーク用品がこちらの服やバッグに付着したら取れないのにどうするのか」

というものである。

 これも女性ならではだが、

「マスカラをする際に鼻の下が伸びがちな表情が間抜けなのにそれがさらせる神経を疑う」

と言う人もいた。

 化粧をする女性だからこそ実情がわかって、より嫌悪を感じるのだろう。

 女性である筆者(才田怜、ジェンダー研究家)は、先日隣の女性が化粧を始めたときに、

「隣でいろいろなものを開け閉めして慌ただしい」
「ひじがぶつかる」

という物理的な問題をまず感じた。

 その後もやもやした気持ちが何なのか考えていたが、

「(舞台裏を見せられていて)自分が存在していないかのようにふるまわれる」

感覚だった。これは、一般には男性が感じやすい気持ちなのかもしれない。

 車内での化粧は、(現状ほぼ)女性が加害者となる迷惑行為である。そして被害者は男性であり、女性である。女性の方が迷惑と感じやすくさえある。

 ジェンダー問題はとかく女性が弱者になりがちだが、このような複雑なパターンもあることを改めて考えさせられた。以下にアンケート結果を貼る。読者の皆さんは何を感じるだろうか。

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『アンケート結果』
※第1回(2000年度)から5回(2004年度)はコメント付き。2009年から複数回答(三つまで)可能。

・2000年度:第9位(女性の化粧28件(1.8%)電車内でOLや女子高生が化粧をしている姿にあきれてしまう)
・2001年度:第9位(女性の化粧65件(2.9%)車内での化粧や化粧のにおいが気になる)
・2002年度:第8位(女性の化粧85件(3.7%)車内での化粧や、化粧品のにおいが気になる)
・2003年度:第5位(女性の化粧(7.1%)化粧や化粧品のにおいは密閉された車内や待合室では気になる。髪をとくなどすると不衛生な感じがする)
・2004年度:第7位(女性の化粧(5.1%)化粧をしている時のにおいや髪の毛が不快。公私を考えない行為自体がみっともない。同性からみても不愉快)
・2005年度:7位(女性の化粧6.7%)
・2006年度:7位(女性の化粧6.9%)
・2007年度:8位(女性の化粧5.9%)
・2008年度:8位(女性の化粧6.5%)
・2009年度:6位(車内での化粧18.4%)〈男性6位18.4%、女性6位18.5%〉ここから回答は最大3まで
・2010年度:8位(車内での化粧18.0%)〈男性8位17.7%、女性7位19.4%〉
・2011年度:8位(車内での化粧17.5%)〈男性8位16.7%、女性6位21.0%〉
・2012年度:10位(車内での化粧16.5%)〈男性9位16.0%、女性8位18.7%〉
・2013年度:9位(車内での化粧16.9%)〈男性9位16.8%、女性8位17.3%〉
・2014年度:9位(車内での化粧16.5%)〈男性9位15.8%、女性8位18.8%〉
・2015年度:8位(車内での化粧16.5%)〈男性9位16.0%、女性7位18.9%〉
・2016年度:8位(車内での化粧15.7%)〈男性9位15.9%、女性8位14.7%〉
・2017年度:11位(車内での化粧13.7%)以降男女別は5位までしか不明
・2018年度:8位(車内での化粧15.1%)
・2019年度:10位(車内での化粧11.4%)
・2020年度:10位(車内での化粧12.4%)
・2021年度:11位(車内での化粧9.7%)
・2022年度:13位(車内での化粧10.2%)

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