山口「錦川鉄道」経営危機 岩国市の存廃協議入りも、沿線住民は熱い存続運動 昭和の奇跡は再び起きるのか

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山口県岩国市の第三セクター鉄道・錦川鉄道の存廃協議が始まった。2024年度末までに複数案をまとめ、福田良彦市長が最終判断する予定だが、沿線では存続運動がスタートした。

岩国市のプロジェクトチーム始動

岩国市長の福田良彦氏(画像:岩国市)
岩国市長の福田良彦氏(画像:岩国市)

 岩国市は2月、2023年度一般会計当初予算案に錦川鉄道のあり方検討の関連予算約560万円を盛り込み、福田市長が記者会見で2023年度から2年かけて存廃も含めた協議を進める方針を明らかにした。錦川鉄道の経営に改善の見込みが立たないと見ているからだ。

 協議は市役所内に設けたプロジェクトチームが進めている。初会合は5月下旬に非公開で開かれた。7月からは

・錦川鉄道
・山口県
・地域交通に詳しい大学教員ら

から意見を聞く予定だ。これと並行してコンサルタント会社に委託して住民の意向調査を進める。

 市交通政策課は

「最終的に3案程度の選択肢を打ち出し、メリットとデメリットをまとめる。その結果を基に今後の方針を決めたい」

と述べた。

・財政支援による存続
・市が車両や線路を保有し錦川鉄道が運行に専念する「上下分離方式」の導入
・廃線と代替交通の確保

などが検討されると見られる。

落ち込む利用、経営は公的支援頼り

錦川鉄道本社のある錦町駅(画像:OpenStreetMap)
錦川鉄道本社のある錦町駅(画像:OpenStreetMap)

 錦川鉄道は、市や山口県の出資を受けて1987(昭和62)年に設立された。

 旧国鉄の第2次廃止対象特定地方交通線だった岩日線を引き継ぎ、錦川清流線として運行している。全線が単線の非電化区間。本来の区間は川西~錦町間32.7kmだが、すべての列車がJR西日本の岩徳線に乗り入れ、岩国~錦町間を走る。

 しかし、沿線は錦川沿いの山間部。開業前から厳しい経営が予想されていた。決算が黒字になったことは一度もない。コロナ禍が続いた2021年度は利用者が約13万人にとどまり、過去最少に。その結果、

「約1億2000万円」

の経常損失を出し、過去最大の赤字幅を記録した。

 2022年度決算は近く発表される予定。錦川鉄道は

「春に観光客が少し増えるなど、回復の兆しが見えるものの、厳しい経営状態に変わりない」

と説明する。

 沿線の人口減少も深刻だ。錦川鉄道は2006(平成18)年に岩国市と合併した旧美川町、旧錦町を通るが、旧美川町は合併前の約1600人が約800人、旧錦町は約3800人が約2100人にほぼ半減した。1km当たりの1日平均輸送人員を示す輸送密度は、旧国鉄時代の1420人がコロナ禍前の2019年度で

「268人」(81%減)

まで落ち込んでいる。

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