新幹線に必要なのは最高速度か、それとも加速力か? 「N700S」「E5」を例に考える

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新幹線車両の「最高速度」「加減速性能」は、各事業者の置かれた環境で考え方が異なり、とても興味深い。その一部を紹介する。

E5系ほかの考え方

E5系(画像:写真AC)
E5系(画像:写真AC)

 東北新幹線を走行するE5系・H5系・E6系は、最高速度は320km/hだ。この最高速度は、宇都宮から盛岡までの区間で可能である。高規格の新幹線の線路で、とにかく最高速度を出す、というのがこれらの車両の考え方だ。

 東京から新函館北斗まで行くような列車は、大宮から盛岡までは停車駅は少なく、最高速度に乗ってしまえばずっとその速度で走ることが可能である。東京から大宮までを除くと、東海道新幹線ほど列車密度が濃い区間を走行しているわけではない。

 一方、E5系やH5系の起動加速度は、1.71km/h/sだ。N700Sよりも起動加速度は低い。山形新幹線「つばさ」のE3系と併結(終着地は異なるが途中区間を同一にする列車・車両、種別の異なる車両などを連結すること)する際は、1.6km/h/sとなっている。なおE2系はE3系と同じ最高速度・起動加速度だ。宇都宮~福島間では、最高速度や起動加速度の異なる車両が混在する状況になっている。

 なおこの状況を解決するために、JR東日本は山形新幹線向けに最高速度300km/hのE8系を導入し、E5系と併結しようとしている。高速走行できる区間が宇都宮~福島と短いためだ。

 東北新幹線のダイヤは、大宮から北に行くにしたがって、本数が減っていく。まず那須塩原で減り、福島で山形新幹線へ分岐、仙台発着の列車も多く、盛岡で秋田新幹線が分岐する。盛岡以北は本数も少なく、整備新幹線規格のため260km/hとなっている。

 北海道新幹線札幌開業に向けて、最高速度は出せるように対策はするものの、あくまで一列車の速達性さえ確保できればいいという考え方となっており、起動加速度まで性能を向上する必要はないのである。

 北陸新幹線や上越新幹線と線路を共用する東京~大宮間では、最高速度が在来線特急並みとなっている。ここで加減速性能を向上して到達時間を短くするという考えもなくはないが、費用対効果は低いと考えられる。

 新幹線車両の最高速度や加減速性能については、それぞれの事業者が置かれた環境で考え方が異なり、興味深いといえるだろう。

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