新幹線に必要なのは最高速度か、それとも加速力か? 「N700S」「E5」を例に考える

キーワード :
,
新幹線車両の「最高速度」「加減速性能」は、各事業者の置かれた環境で考え方が異なり、とても興味深い。その一部を紹介する。

進む加減速性能の統一

ブルートレイン(画像:写真AC)
ブルートレイン(画像:写真AC)

 ブルートレインが多く走っていた東海道本線の東京口では、朝のラッシュ時にその種の列車が都心に入らないようにダイヤが組まれていた。客車列車と電車列車では、車両の性能がまったく異なっているからだ。そういう事情もあって、ブルートレインはなくなっていった。

 一方、JRに入ってから特急車両も加減速性能を向上させていった。通勤電車と一緒の線路を走る列車は、通勤電車と加減速性能を近づけるようにし、ダイヤを細かく設定できるようにした。

 この発想は新幹線にも導入された。東海道新幹線で300系が登場した際、最高速度270km/hというのが注目された。この当時、最高速度が異なる車両が東海道新幹線でも走っていたため、完全に性能を生かしきれるという段階にはならなかった。500系が東海道新幹線に乗り入れても、線路の特性から山陽新幹線を走行したときほどの性能は出せなかった。

 そこでJR東海とJR西日本は、性能を統一した700系を共同で開発する。起動加速度2.0km/h/sと、もちろん通勤電車ほどではないにせよ、車両の性能を統一しようとする方針を採用した。

 これにより、運用の融通性が高くなるだけではなく、「詰め込んだ」ダイヤを組むことが可能になった。東海道新幹線のダイヤは、都市圏私鉄のダイヤと、性質上近い状況が、ますます進んでいった。

全てのコメントを見る