日本企業の「脱中国」はどこまで進むのか? 改正反スパイ法は7月施行、いま注目すべき「デリスキング」とは何か
経済や貿易領域で米中対立が激しくなり、台湾情勢では有事を巡って緊張が高まっている。そのため、中国や台湾と強い関わりを持つ企業を中心に懸念の声が広がっている。
「デリスキング」という現実的選択

そして最近、筆者(和田大樹、外交・安全保障研究者)の周辺ではどこまで日本企業の脱中国が進むかという議論がよく聞かれる。こういった企業向けに地政学リスクのコンサルティングを行っている身として感じることがある。
まず総論的にいえば、国際政治経済の世界では近年「デカップリング(経済の切り離し)」という言葉が頻繁に使用されるが、中国が
「日本の最大貿易相手」
である現実から、日本経済の中国とのデカップリングは極めて難しい、非現実的といえる。よって、中国との経済関係を維持しつつも、リスクが想定される部分ではリスクヘッジをするという
「デリスキング」
が唯一の答えとなる。上述したようにデリスキングの動きは製造業を中心に広がっている。
問われる各企業の対応

一方、各論的な視点からいえば、日本企業による対中デリスキングだけでなく、対中デカップリングが可能なケースも少なくないかもしれない。
当然ながら、業種によって、企業によって、中国依存度は異なり、脱中国の難易度も大きく違うだろう。
例えば仮に台湾有事など戦争状態に陥り、日中関係が極めて悪化するという究極的状態になれば、対中デリスキングを徹底しても、全く意味がない場合も想定される。
中国による経済的報復が広範囲になればなるほど、経済安全保障上、懸念すべき領域外にもより大きな影響が及ぶことから、事前の対中デカップリングが功を奏す場合も考えられる。
日本企業全体で対中デカップリングは非現実的だとしても、企業ごとに可能な範囲で対中デカップリングを検討することは戦略的に重要であり、中国依存度が低い、代替措置が可能な企業を中心にそういった流れが広がってくる可能性もあるだろう。