日本企業の「脱中国」はどこまで進むのか? 改正反スパイ法は7月施行、いま注目すべき「デリスキング」とは何か
経済や貿易領域で米中対立が激しくなり、台湾情勢では有事を巡って緊張が高まっている。そのため、中国や台湾と強い関わりを持つ企業を中心に懸念の声が広がっている。
国内各社に広がる波紋

こういった不透明で不確実な地政学リスクが存在するなか、国内回帰や調達先の分散を積極的に進める企業の動きが広がっている。
例えば、日刊工業新聞が6月5日付けで発信した記事によると、タングステンとモリブデンの加工を行う日本タングステン(福岡市博多区)は、主要製品の原料であるタングステンを価格の安い中国産にほぼ100%依存してきたが、今後は北米や欧州からの調達を強化するという。
電子部品メーカーのタムラ製作所(東京都練馬区)は中国で生産している芝刈り機などをルーマニアの工場でも生産する計画を発表し、建築材料・住宅設備機器業界最大手のLIXIL(東京都品川区)も米国向け水回り製品の製造拠点を、中国などアジアからメキシコにシフトしている。
2022年にも、大手自動車メーカーのホンダ(東京都港区)は自社が持つ部品の国際的サプライチェーンを再編、中国とその他地域を切り離して方針を打ち出した。
マツダ(広島県府中町)も高まる地政学リスクを考慮し、新車の製造で使用する部品の中国依存度を下げていく方針を明らかにした。
キヤノン(東京都大田区)の御手洗冨士夫会長兼社長も2022年、海外の生産拠点などを時代に見合った体制に見直すべきとして主要な工場を日本に回帰させる考えを示し、企業の経済活動が影響を受ける国々に生産拠点を放置することはできず、
・安全な第三国への移転
・日本に戻す
という、ふたつの道しかないと言及した。